映画「サバイビング・プログレス――進歩の罠」が問いかける現代文明の危機

映画「サバイビング・プログレスー進歩の罠」。渋谷アップリンクほか、3月23日よりロードショー

制作総指揮にアカデミー賞受賞監督マーティン・スコセッシ、「ザ・コーポレーション」監督のマーク・アクバーを迎えて、壮大なスケールと圧倒的な映像表現で人類の進歩を描き、現代の私たちに警鐘を鳴らす渾身のドキュメンタリー。

人類5万年の歴史を振り返り、「よい進歩と悪い進歩があるのでは?」を問いかける。人間の頭脳は、人類発祥の昔からアップグレードされてはいないが、道具を使い、やがては機械を生みだし、技術の革新に次ぐ革新で、現代文明に到達している。

しかし、一方で世界人口は増え続け、すでに70億人を突破し、このままでは近い将来、必ずや深刻な食糧危機が訪れ、飢餓人口が膨れ上がるが、何の解決策も見つかってはいない。その上、先進国を中心とした大量消費社会による地球環境破壊の危機が叫ばれてから、数十年が経とうとしているが、根本的な解決策は見いだせてはいない。

このドキュメンタリー映画のガイド役を務める『暴走する文明「進歩の罠」に落ちた人類のゆくえ』の著者ロナルド・ライト氏は「経済…それも国際金融資本主義が世界を席巻したおかげで、目先の利益中心の社会になり、途上国は借金の返済に追われて貴重な森林伐採をしなければ生活が成り立たなくなっている」と、鋭く現在の資本主義経済を批判し、環境問題、貧困問題の根底に、貨幣価値のみが横行する価値観があるからではと、強い疑念を示す。

現代文明はグローバリゼーションの結果、過去の人類の歴史とは異なり「代わりのきかない地球上唯一の文明」になってしまった。その文明が持続可能性の危機に瀕している。

様々な問題を提起した本作品は、現代文明の崩壊の危機を多方面から具体的に、見事な映像と様々な専門家のインタビューで浮かび上がらせ、我々に「今、何をなすべきか?」「どんな価値観へのシフトが必要か?」を考えさせてくれる。(オルタナ編集委員=高馬卓史)

◆「サバイビング・プログレス - 進歩の罠」の上映情報はこちらから

 

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高馬 卓史

1964年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。総合情報誌『選択』編集長を経て、独立。現在は、CSR、ソーシャルビジネス、コミュニティ・デザインなどをフォロー中。執筆記事一覧

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