オムロン、実証実験で製造業のCFP算出の「標準化」目指す

記事のポイント


  1. オムロンは製造過程のエネルギーの効率性を上げるため実証実験に取り組む
  2. 供給網のGHG削減につながる、効果的なデータ収集・分析は確立されていない
  3. オムロンは自社だけでなく、製造業に応用可能な算出方法の標準化を目指す

オムロンは製造過程のエネルギーの効率性を上げるため、3月から大規模な実証実験に取り組む。製品サプライチェーンのカーボンフットプリント(CFP)を算定するための、データ収集の自動化、GHG排出量の算出方法の標準化、現場改善の効率化などを検証する。自社だけでなく、供給網含めたGHG削減が求められるが、効果的な収集・分析手法は確立されていない。この実証を通して、製造業の脱炭素化を促進する。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

実証実験の全体イメージ

オムロンは1月29日、製品サプライチェーンのCFPの見える化に向けた実証実験に取り組むと発表した。オムロングループが提供する血圧計や制御機器向け電源などから分析対象を選ぶ。期間は3月から12月。NTTコミュニケーションズ、コグニザントジャパン、ソルティスターと連携する。

この実験の狙いは3つある。一つ目は、CFP算出に必要な生産現場のデータ収集を自動化し、算出・改善支援ツールを確立することだ。自社だけでなく、供給網含めたGHG削減が求められるが、いまだに効果的な収集・分析手法は確立されていない。

各製品のGHG排出量の算出には約1年もの期間を要することも多く、各社が脱炭素化に取り組む上で大きな課題となっていた。

今回の実証では、IDEAなどの排出係数を用いて、一連のCFP算定を自動化する仕組みや標準化方法が正しいかを検証する。その後、データを一次データに置き換え、オムロンの組み立て工程での実際のデータに基づき、改善の進捗を確認する。

オムロンの山川健太・IABカンパニー商品事業本部i-Automation!事業推進センター長は、「これらの取り組みはエネルギー生産性を提唱し、多くのソリューションを提案できる、現場知見や設備の制御知見を豊富に持つオムロンこそが取り組むべきことだと考えている。生産性とエネルギー削減の両立に向けて現場レベルでの改善に注力できるよう、業務プロセスの効率化を図りたい」と話した。

日本の製造業では初、「Catena-X」とも連携へ
経産省の「ウラノス・エコシステム」との連携も視野に
「オープンイノベーション」で共創の輪広げる

二つ目の狙いは、グローバルのデータ流通基盤を活用した収集・分析ノウハウの獲得だ。今回の実証実験に当たり、欧州の自動車産業向けプラットフォーム「Catena-X(カテナエックス)」と連携する。日本の製造業としては初のことだ。

山川センター長は、Catena-Xと連携するメリットについてこう語った。「Catena-Xはグローバルデータ流通基盤として、他のルールに先駆けて運用が始まった。今後、CFPの可視化や電池パスポートのように、製品に関わる情報を見える化していくためには、Catena-Xに代表される様々なデータ流通基盤に接続することが重要だ」。

日本の経産省が進めるデータ連携基盤「ウラノス・エコシステム」との連携については、「現時点では稼働しているデータ流通基盤が、Catena-Xのみなので、これを最初の対象として実証を重ねていく。ウラノスなど、他の国際ルールについては、実運用が検討される段階でパートナーと協力して対応していく」とした。

「オープンイノベーション」で共創の輪広げる

三つ目は、サステナブルなモノづくり現場の実現に向け、共創を促すことだ。この実験では、オムロンのサプライチェーン上のCFP算定に取り組むが、製造業が応用可能なデータ収集の自動化や算出方法の標準化を狙う。

山川センター長は、「コンソーシアムのような加盟社でなければ利益が享受できないような仕組みではなく、オープンイノベーションに近しい形を志向している」と言う。

「実証実験でコアとなるオープンなデータ連携基盤を確立し、そこで得たデータへの付加価値付与については、更に多くのパートナーと価値拡大の取り組みを図り、これらを必要とする多くの製造業のお客様に提供していきたいと考えている」。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #脱炭素

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