■民主主義は参加してつくるもの
観察映画では、事前にリサーチや台本作りなどは行わず、予定調和を排して「行き当たりばったり」で撮影する。想田監督は山さんの再出馬の一部始終を撮影したものの、すぐには編集できなかったという。
ところが昨年12月の衆院選で自民党が圧勝。「あれだけの事故が起きたはずなのに、(原発を推進してきた)自民党が大躍進する不条理。あれっ、この不条理な感じは以前にも感じたぞ、と思い返したら、それは山さんの再出馬の時だった」(想田氏)。
危機的な原発事故のさなかでも整然と通勤し、選挙が行われる光景は、衆院選後の日本の姿を先取りしていた、と映画の編集を経て想田氏は考える。「実は3・11直後から、世の中はこの事故をなかったことにしたかったんじゃないか」(同)。

衆院選では原発問題は争点にならず、投票率は低迷。原発問題などという面倒なことは忘れたい。そして気に入った政党や候補者がいなければ投票もしない――こうした在りようを想田氏は「消費者民主主義」と名付ける。「政治家は政治サービスの提供者で、有権者は投票と税金を対価にしたその消費者であると、政治家も有権者も誤ってイメージしている」というのだ。
そうした消費者民主主義に対して、「選挙2」の山さんは徒手空拳で挑む。その姿はさながらドン・キホーテを思わせるが、「民主主義は参加してつくるもの」だという当たり前のことを、観る人に気付かせてくれるのではないか。
「選挙2」は6日(土)より東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで上映される。(オルタナ編集委員=斉藤円華)