ワイ・ヨットが伝え続ける「安心安全なフライパンの選択」

記事のポイント


  1. ワイ・ヨットは安心・安全なフライパン「GreenPan」を広めてきた
  2. フライパンのフッ素樹脂加工には、人体に害を及ぼすPFASが存在する
  3. 海外では、アパレルやコスメ業界でもPFASの使用を禁止へ

サステナブル・セレクション 三つ星企業紹介

ライフスタイル商品を扱うワイ・ヨット(名古屋市)は、有害物質を含むフッ素樹脂を使用しないフライパン「GreenPan(グリーンパン)」を日本に広めてきた。一般的に、焦げ付き防止としてフッ素樹脂加工が使われるが、そのなかに含まれるPFAS(有機フッ素化合物)の健康被害が懸念される。海外では、アパレルやコスメ業界でもPFASの使用を禁止する動きがある。(オルタナ編集部・下村つぐみ)

・富水流貴司(ワイ・ヨット  商品開発部  課長代理)
・緑川晴彦(ワイ・ヨット  CSR推進室 部長)
・渡辺 麻子(ザ・クックウェア・カンパニー・ジャパン セールスサポートマネージャー)

有害なPFAS を一切使用しない、特許取得のセラミック・ノンスティックコーティングフライパン

「フッ素加工」に隠された危険

――グリーンパンはフッ素加工していない点が特徴です。どのようにグリーンパンを知り、取り扱いを決めたのでしょうか。

富水流:グリーンパンはベルギー発の調理器具ブランドで、2007年に設立しました。一般的なフライパンにはフッ素加工がされていますが、グリーンパンは有害物質を含むフッ素樹脂を使用していません。当時、安心・安全なフライパンとして、欧州を中心に注目が集まっていました。

16年ほど前に当時の社長が、ドイツ・フランクフルトで開催される世界最大級のBtoBの国際消費財見本市「アンビエンテ」で、グリーンパンの存在を知りました。「PFAS(ピーファス)を使用しないセラミックのフライパンは健康や安全性において、今後世の中の主流になると考え、約2年、同イベントに足を運び、取り引きに至りました。

グリーンパンの展示会の様子

――なぜフッ素コーティングでない「グリーンパン」が開発され、それほど注目を集めたのでしょうか。

渡辺グリーンパン開発のきっかけは、塗膜屋が調理器具に健康被害を与えるPFASの使用を隠蔽していたことが世に明らかになったことでした。

PFASは人工的に作られた有機フッ素化合物の総称で、一部の種類では分解されず、体内にも蓄積していくものもあります。特に有害性の高いのが「PFOS」と「PFOA」で、日本やEUを含む180もの国や地域で製造・使用・輸入が禁止されています。

EUでは、すでにPFASについても「発がん性がある」と断定し、腎臓がんや甲状腺異常、先天性の発育不足などとの関連性を特定しています。

2003年に起きた韓国の地下鉄放火事件で、防炎素材であるセラミック塗膜を地下鉄に採用したことが大きなヒントとなり、発起人であるグリーンパンオーナーのヤン・ヘルスケンスとウィム・デ・ヴァーマンのもと、約10年間、イギリス人の博士や韓国のセラミック塗膜屋などと、セラミックコーティングのフライパンの研究を続け、ようやくグリーンパンは完成しました。

PFAS禁止する大手企業が続々と

――欧州では、健康への意識が高い印象がありますが、日本と欧州の消費者の意識はやはり全く違うものでしょうか。

富水流海外では何年も前から様々な企業がPFASの使用を禁止する動きがありました。例えば、マクドナルドやスターバックスなどの大企業はPFASの使用を禁止しています。特に、マクドナルドではハンバーガーを包む紙にもこびりつきを防ぐためにPFASが使用されていました。

また、アパレル業界でも、レインコートなどの撥水加工にPFASが使用されており、H&MやパタゴニアもPFASの使用を禁止しています。

2025年には、EU諸国と米国でPFASに対する規制が強まっていく可能性がほぼ決定しているという報道もあり、この流れは一気に加速するのではないかと思います。

企業の動向に合わせ、さらに消費者の意識も高まっていくと思いますが、日本ではまだ規制に踏み切っていない点からも、海外と比べ、かなりの隔たりがあるのではないかなと思います。

ただ、日本でもPFASの報道が少しずつ増え、セラミックコーティングに関心を持つメーカーも増えてきています。

渡辺ニュージーランドは世界で初めて、2026年までにPFASを含んだ化粧品の販売を禁止することを発表しました。

――海外では、企業の動きが早いことで、認知度の向上に寄与していると考えられますね。日本ではまだPFASの認知度は低いのでしょうか。

富水流そう思います。認知度向上に向け、当社は約2年前に、グリーンパンの公式オンラインサイトを立ち上げ、PFASやフッ素樹脂の危険性をブロガーやインフルエンサーとコラボしながら、伝えています。

ここ数年でグリーンパンの売り上げは急激に伸びており、消費者には「セラミックコーティングといえば、グリーンパン」といった認識が広まっているのではないかと感じています。

「金属」の静脈産業へ挑む

――独自で使い終わったフライパンを回収し、リサイクルする事業も2022年に始めました。フライパンはブランドを問わず回収するのでしょうか。

富水流リサイクル事業は2022年3月から始まりました。当社のオンラインストアでグリーンパンを購入していただいた方限定で、自宅で使わなくなったフライパンを回収し、リサイクルに回すサービスです。フライパンのメーカーなどは問わず回収をしています。

回収後は、提携を結んだ専門の業者が、素材ごとに分別をして、再資源化しています。例えば、アルミや鉄、ステンレスなどは建材に使用されたり、木の取手などはチップに利用されたりします。

去年までの1年間で400個以上のフライパンを回収しました。お客様からは「捨てるのに困っていた」「リサイクルしてくれるのは嬉しい」というお言葉もいただいております。

料理や食材に気を遣う人は増えたものの、調理器具自体を気にする人はまだ少ない印象です。

PFASの報道が増えている今、グリーンパンの安全性の訴求はもちろん、製品工程においても環境や健康を意識して世に送り出しているということを伝えるチャンスなのではないかと思っています。

緑川: 金属製品は回収しても、熱を加えてしまうことにより品質保証ができず、もとに戻すというのが非常に難しい製品です。異業種の方や専門の方と話をし、純粋な成分を少しでも製品に戻せるよう、自社内で喧々諤々と議論しています。

※ワイ・ヨットのGreenPan(グリーンパン)は、オルタナとサステナ経営協会が共催する「サステナブル・セレクション2023」の三つ星に選ばれました。「サステナブル・セレクション2024」の応募は、4月1日から受け付けます。

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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