民間軍事会社PMC社長の湯川遙菜さん(42)がシリアで、イスラム教スンニ派過激集団「イスラム国(ISIS)」に拘束された問題で、一般市民がSNSで同集団関係者に湯川さんの解放を呼びかけていたことが分かり、ネット上を賑わせている。解放交渉は本来、政府関係者やプロの交渉人が行うものだが、素人であるネット市民が「にわか交渉」を始めてしまったことはネット社会の弊害といえるだろう。(フォトジャーナリスト=川畑嘉文)
■個人の情報をツイッターで提供
湯川さんは、トルコ南部の町キリス国境を渡ってシリアへ入国。4月に同国を訪問した際に出会った知人を頼り反体制派武装組織「イスラム戦線」に同行中、シリア北部の町アレッポ郊外で拘束されたとされる。
8月18日までに、インターネットを通じてイスラム国によるものとされる犯行声明が出され、動画投稿サイト「ユーチューブ」には、拘束された湯川さんの映像が複数投稿された。
これを受け、日本のSNS利用者らは、イスラム国の関係者のモノであるとされるSNSアカウントに対し拙い英語で、「彼はCIA関係者ではない。無実の人間を殺すのはやめて」「彼はビジネスでシリアを訪れただけで、あなたたちの家族を傷つけるつもりはない」などといった投稿を行った。
あるフリーライターなどは、「彼は民間軍事会社の経営者である。彼自身が銃火器を使用する写真もある」など、湯川さんの情報を過激派側に提供していた。湯川さんを不利な状況に貶めたとして、このライターは謝罪文をブログで公開、日本政府関係者と連絡をとったことも表明している。
■ネットで変わる紛争の「実態」
インターネットの普及に伴い、紛争地の戦闘員たちの行動も変化した。自動小銃を発砲する戦闘員の隣で、仲間がその様子をカメラ付き携帯電話で撮影し、ネット上にアップする。
それを世界中の人々に公開し、自らのグループが優勢であると誇示すると同時に、支援者へ更なる武器の提供を呼びかけるのだ。今回のように捕虜の様子や殺害現場をネット上に公開し、見せしめとする。