謎の白票誘導キャンペーン、実態は「人工芝運動」?

12月2日告示の衆院選を前に、「白票を投じれば社会が変わる」と主張するキャンペーンサイトが登場した。作成者は「日本未来ネットワーク」を名乗るが、その正体は不明。市民による草の根運動と見せかけて、団体などが意見を主張する「人工芝運動(アストロターフィング、偽草の根運動とも)」を疑う指摘もある。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■「白票は有効」に根拠なし

白票投票を呼び掛ける「日本未来ネットワーク」のサイト
白票投票を呼び掛ける「日本未来ネットワーク」のサイト

同サイトでは「権力が最も恐れるのは、多数の民衆の意見」だと主張。その上で、「入れたい候補がいないとき、誰に入れてわからないときは棄権せず、その思いを白票に込めて投票しましょう」と呼びかける。選挙で当選した政治家が、白票の多さに「不信任票では」と危機感を抱く、という筋立てのマンガも掲載されている。

ところが実際には、白票は無効票として扱われるため、候補者の当落とは無関係。従って「白票の多さが政治家へのプレッシャーになる」との主張は、根拠なきフィクションとわかる。むしろ選挙で白票を投じれば、それは市民が政治家に白紙委任を表明することになる。

そればかりか、当初サイトは「アメリカのように2大政党が競り合うより、安定した与党が変革を重ねるほうが国民性に合っている」との一文も掲載。政権与党に肯定的な立場を強調していた。文章は後に削除されたが、「政治への不満を白票に託すべきだ」との姿勢では終始一貫している。

■アフィリエイト(小遣い稼ぎ)で拡散

サイトを作成した「日本未来ネットワーク」を名乗る団体は、構成員や所在地などの情報が一切不明。フェイスブックでは「ごく一般市民の活動」を自称する。

ところが同団体は、SNSで書き込みをした人が報酬を得られる「アフィリエイトサービス」を使ってキャンペーンのツイートを拡散しているのが目を引く。「同サービスの出稿料は10万円以上が必要」との指摘もある。同団体に取材を申し入れたが、29日昼時点で回答はない。

「断定はできないが、人工芝運動のようにも見える」と指摘するのは、元コピーライターで広報コンサルタントの中園順子氏。人工芝運動は「市民の草の根運動や、ネットへの書き込み、レビューなどを装って、政党や企業などが意見を誘導するのが特徴」(中園氏)という。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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