持続可能性と戦略:人材マネジメント【企業と社会の関係】

岡田正大教授(慶應義塾大学)からは、戦略理論の領域における持続可能性とは、持続可能な競争優位という文脈において「時間軸上でその優位性が継続すること」という経済的側面のみを意味していましたが、いまや社会的・環境的側面を統合させることが不可避であることが指摘されました。そして、経済的価値と社会的価値の両方を最大化する条件について問題提起が行われ、パネルディスカッションが行われました。

経済的価値と社会的価値を生む人材づくりCBバタチャリア教授(独ビジネススクール、ESMT)からは、成功している企業は持続可能性を機会として捉えていること、ステークホルダーを中心に据え、ステークホルダーエンゲージメントをもって戦略を策定していることが指摘されました。

リスク軽減のためではなく、企業価値につなげていくという視点が重要であるが、いかに全社員に持続可能性について理解させ、同じ目標を共有させるかということについて問題提起されました。

和田勇会長(積水ハウス)からは、同社では住宅展示場で個人を対象に営業活動を行うスタイルであるため、一人ひとりの営業マンに持続可能性についても学ばせるためにサステナビリティレポートを徹底的に読み込むなど社員教育を徹底していること。

売上げのみならずCO2排出量や年間植栽本数などのサステナビリティ指標を設定し、定量的な成果測定を行っていることが紹介されました。少子高齢化により新築戸建住宅のニーズが減る中、同社ではサービス付き高齢者住宅などの新しいビジネスに取り組んでおり、課題をビジネスに転じる視点が必要であることが指摘されました。

そしてバーター氏から、一定の職務経験を持つ人材は全体的視野をすでに身につけていると思われること。バタチャリア氏から、人間の持つ潜在能力を重視するマネジメントの重要性がコメントされました。

CSRmonthly 第27号( 2014年12月5日発行)

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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