水上 武彦(株式会社クレアン)
今回は、グローバルでCSVを展開するFSGによる、製薬および医薬機器企業のCSVに関するレポートの概要を紹介します。
製薬・医療機器企業は、事業自体の目的が、人々の生命や健康を守ることにあるため、適切に事業を行っていれば、企業価値と社会価値を両立させることができます。
しかし、CSVは、これまでの企業活動では十分対応できていない社会的課題に対応する視点を提供するための経営フレームワークであり、製薬・医療機器企業でCSVの対象とすべき社会的課題としては、「途上国の医療事情の改善」があります。
FSGのレポートでは、グローバル製薬・医療機器企業による、最近の「途上国の医療事情改善」のための取り組みを、CSVの3つの方法をもとに整理しています。
■「途上国の医療事情改善」のためのCSVの方法と事例
「a. 製品・サービスのCSV」について、途上国の医療事業を改善する製品・サービスを提供するためには、以下が必要です。
a1:これまで十分な開発費が投入されていなかった、途上国特有の疾病に対するR&Dの推進
a2:製品の簡素化などによる、既存製品のコスト削減
a3:現地事情に合わせた価格や製品利用環境のカスタマイズ
a1の例としては、第一三共とインド子会社ランバクシーによる結核、マラリア、テング熱のR&Dなどが、a2の例としては、GEがリバースイノベーションで開発した、1000ドルの携帯型心電計などがあります。a3の例としては、グラクソスミスクライン(GSK)が、後発開発途上国において、特許で保護された医薬品の価格を英国の価格の25%以下に引き下げている、などがあります。