経済産業省が4月末に示した2030年の国のエネルギー需給見通し案では、電力に自然エネルギーが占める割合は最大で24%だった。一方、2022年の脱原発実現を目指すドイツは現時点で既に自然エネルギー導入率23%を達成。30年で50%、50年で80%という野心的目標を掲げる。『100%再生可能へ!ドイツの自然エネルギー企業』(村上敦・池田憲昭・滝川薫著、学芸出版社刊、税込2376円)は、地域で市民らが主体となって自然エネルギービジネスを牽引しているドイツの実情を伝える。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■設置出力量の大半を地域が出資
ドイツでは、自然エネルギーの導入に代表的なエネルギー構造転換の潮流を「エネルギーヴェンデ」と呼ぶ。いわゆる「エネルギーシフト」に相当する言葉だ。発端は1997年にEUが域内に発した電力指令で、ドイツも電力自由化を目指すことに。2000年には自然エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が施行。火力や原子力などによる大規模集中型から、自然エネルギーを使った地域分散型へ、電力システムの移行が続いている。
その中心を担っているのが、地域の市民や中小事業者などだ。ドイツの自然エネルギー施設で、12年時点における設置出力量に占める地域セクターの割合は実に67%を占める。地域に自然エネルギー施設を市民らが出資して設立することで、従来はエネルギー購入費として地域外に流出していた富が地域に留まる。すると域内で自然エネルギー関連産業が盛んとなり、雇用や税収も増える仕組みだ。
また、自然エネルギー施設を運営する事業体も株式会社、協同組合、都市公社と多彩だが、市民は経営にも参画。映画にもなった「シェーナウ電力会社」のように配電網を買い取ったり、より経営のハードルが高い風力発電や地域熱供給事業にも参入したりするなど、その躍進ぶりは目覚ましい。本書を読み進めると、エネルギーヴェンデが単に電力やエネルギー一般にとどまらない、より広範で包括的な内容を含んでいることが見えてくる。