持続可能性と金融市場[齊藤 紀子]

2008年のリーマンショック以降、グローバル投資家の間では、サステナビリティの観点から投資判断ができるような企業評価の仕組みを求める声が高まりを見せていました。これに応えるため、従来投資家に対し経済・金融関連データの提供サービスを展開してきたブルームバーグ社では、2009年にESG情報提供サービスを開始しました。

提供している情報の具体的内容は
(1)ESGの視点による企業分析結果・ランキング
(2)最も旬な話題や政府の規制、マーケットトレンドなどの分析レポート
(3)企業レポートを基にした非財務情報データベース
(4)ニュースリリースと同時に掲載される不祥事情報や、サプライチェーンにおけるリスクを確認できるサプライチェーン分析情報などです。本サービスの利用者が2013年度までに対2009年度比で約4倍に増加していることからも、需要の高まりが見てとれます。

黒崎氏は、欧州ではSRIチームを解散した運用会社があることを例に挙げ、SRIからESG投資への移行と呼べる現象が起きていることを指摘しました。社会的に良い一部の企業に投資するよりも、通常の投資の中にESG視点を組み込み、投資先企業を判断することが主流になってきており、もはやSRIに限定した特別チームを持つ必要がないというのです。

日本でも、日本版スチュワードシップ・コード発表後「何からはじめたらよいか」、「エンゲージメントの具体的な進め方として、誰とどのようなコミュニケーションをとるべきか」といった問合せが増えており、同社ではサポートサービスを充実させていく予定だということです。

各報告後に参加者を交えて行われた議論では、事業会社による統合報告書を投資家が活用し始めていること、6つの資本を考慮に入れて少ない資本でも多くの成果を出せるように経営のスタイルを変えていく必要があること、経済収益の最大化プラスESG経営を行うことがグローバルスタンダードになってきたこと、持続可能性のために日本の金融市場が果たしうる役割に期待できること、などがコメントされました。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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