記事のポイント
- 米トランプ政権とハーバード大学の対立が激化している
- トランプ大統領は、命令に従わないハーバード大学を「民主主義の脅威」と非難する
- 大学側は、「自由で独立した大学こそ民主主義の機能に絶対不可欠」と言い切る
米トランプ政権とハーバード大学の対立が激化している。2025年3月、トランプ政権は米国内の複数の大学に対し、連邦政府資金の凍結を打ち出した。これに反旗を翻したのがハーバード大学だ。命令に従わない同大学をトランプ大統領は「民主主義への脅威だ」と非難するが、大学側は「自由で独立した大学こそ、憲法に基づく民主主義の機能には絶対不可欠」との姿勢を崩さない。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

(c) Stephanie Mitchell
■「反ユダヤ主義」を理由に大学に圧力かける
トランプ政権は2025年3月、ハーバード大学やコロンビア大学に対し、連邦政府の助成金凍結を示唆した。この背景にあるのが、2024年に大学キャンパス内で激化した、学生たちによるパレスチナ関連の抗議デモだ。
トランプ政権は、大学側が反ユダヤ主義による差別からキャンパス内の学生を保護する義務を怠ったと捉えた。
そして、大学側が、逮捕権限を持つ新たな警備員の配置、大学施設内での抗議活動の禁止、中東に焦点を当てた教育プログラムの見直しといった措置を実施すれば、資金の拠出を再開する準備があるとした。
連邦政府からの助成金はハーバード大学だけでも約22億ドル(約3200億円)に上る。これら資金の大半は、主として科学や医学の研究に充てられているものだ。
米教育省は4月、パレスチナの支持活動に参加した米国籍を持たない学生らの国外追放を視野に、一部の大学に、反ユダヤ主義の疑いのある学生の氏名と国籍の提出を求めた。
■「権力の濫用で憲法違反」と反旗を翻す
こうした一連のトランプ政権の措置について、4月初頭にハミルトン大学で演説したオバマ前大統領は、大学や法律事務所に対し、連邦政府の資金援助を失う犠牲を覚悟してでも、威嚇に屈服することなく、学問の自由、そして民主主義の価値観を守るべきだと訴えた。
ハーバード大学のアラン・ガーバー学長は、トランプ政権からの一連の措置を、「連邦政府の権力の濫用で、憲法違反」だと非難した。そしてトランプ政権の要求は「前例のない不当な支配を大学に強いるもので、大学は応じない」と表明し、法的措置を講じた。
■逆らうハーバードは「民主主義への脅威」
その数時間後、トランプ政権はハーバード大学と連邦政府間の契約ならびに助成金の凍結を発表した。
命令に逆らうハーバード大学をトランプ大統領は、「民主主義への脅威」で「リベラルの混乱」だと非難する。
「ハーバードは、他の多くの大学と同様、反ユダヤ主義の極左の教育機関で、私たちの国を破壊したいと願う学生を世界中から受け入れている」と、自身のSNS・トゥルース・ソーシャルに投稿した。
「ハーバードは混乱したリベラルの巣窟だ。狂信者らが教室に出入りし、怒りと憎しみを吐き散らしている。本当に恐ろしいことだ!」と大統領は付け加えた。
トランプ政権は5月23日、ハーバード大学の留学生受け入れ資格の取り消しを発表し、在学中の留学生は、他の大学に転出しなければ米国での滞在資格を失うと伝えた。同大学の学生の4分の1は留学生だ。
クリスティ・ノーム国土安全保障長官は、「これは、全米の大学・学術機関に対する警告と受け止めてほしい」と声明を出した。
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