アジアの温暖化スピードは世界平均の2倍: 世界気象機関

記事のポイント


  1. アジアは、世界平均の2倍の速さで温暖化している
  2. 世界気象機関(WMO)が「アジアの気候の現状2024」レポートをまとめた
  3. 記録的な広さの海域が熱波に襲われ、海面水温は2024年度に過去最高となった

世界気象機関(WMO)は6月23日、「アジアの気候の現状2024」レポートをまとめた。それによると、アジアは、地球平均の2倍以上の速さで温暖化が進んでいるという。2024年は記録的な広さの海域が熱波に襲われ、海面水温は10年あたり0.24℃上昇し、過去最高を記録した。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

1900年から2024年のアジアの年間地表温度
(1991~2020年の平均地表温度を0としてその差を示したもの)

世界気象機関が23日に発表した「アジアの気候の現状2024」は、気温、降水量、北極海氷・氷河・積雪などの雪氷圏、海面温度や海面などの海洋の状況など、アジア地域に絞って現状を分析したものだ。

■2024年、東アジアは長期にわたる熱波に見舞われた

それによると、2024年のアジアの平均気温は、1991年から2020年までの平均気温に比べて約1.04℃高く、データセットによって異なるものの、記録を開始して以来、最も暖かい年または2番目に暖かい年となった。

なかでも4月から11月にかけて、日本を含む東アジアは長期にわたる熱波に見舞われた。日本では4月、7月、10月に月の平均気温を更新したが、韓国でも4月、6月、8月、9月に、中国でも4月、5月、8月、9月、11月に月の平均気温が史上最高となった。

東南アジア、中央アジア、中東でも熱波が報告されており、ミャンマーでは同国にとって最高気温となる48.2℃を記録した。

アジアの気温上昇スピードは現在、地球平均のほぼ2倍の速さで進行している。1991年から2024年までの温暖化傾向は、1961年から1990年までの期間に見られた温暖化傾向のほぼ2倍となった。

アジアは北極まで広がる最大の陸地を持つ大陸であり、陸上気温の上昇が海洋の上昇よりも大きいため、地球平均の2倍以上の速さで温暖化が進んでいるという。

■氷河への打撃も大きかった

冬の降雪量の減少と夏の猛暑は氷河に大きな打撃を与えた。中央ヒマラヤ山脈と天山山脈では、24の氷河のうち、23が大規模な流失に見舞われた。

氷河湖の決壊による洪水や地滑りといった災害が増加し、水資源の安全保障に対する長期的なリスクが高まっているという。

■海面水温は記録を取り始めて以来最高に

海面水温は、記録を取り始めて以来、最高となり、特にアラビア海北部と太平洋では、海面上昇スピードが急速だった。10年間でのアジアの平均海面水温は0.24℃の上昇となり、地球平均(同0.13℃)の2倍近くに相当する。

2024年はまた、アジアの海域のほとんどで長期的に熱波が発生した。1993年に記録を開始して以来、海洋熱波に襲われた範囲は最大となった。インド洋北部や、日本に隣接する海域では、黄海と東シナ海が特に影響を受けた。

特に2024年8月から9月にかけては、この地域の海洋の約1500万キロメートルが影響を受けた。これは、地球全体の海面の10分の1に相当し、面積にすると、ロシア連邦とほぼ同じ大きさ、中国の1.5倍以上となるという。

海面上昇についても、アジア大陸に隣接するインド洋および太平洋側での上昇は、世界平均を上回っており、低地沿岸地域のリスクを高めている。

■2024年は各地で豪雨による異常気象の被害も深刻に

報告書は、2024年度の異常気象についてもまとめた。

2024年最強の台風となったヤギ(令和6年台風11号)は、ベトナム、フィリピン、ラオス、タイ、ミャンマー、中国で広範囲にわたって被害と死傷者を出した。

中央アジア(主にカザフスタンとロシア南部)では、深刻な雪解けと記録破りの降雨により、少なくとも70年で最も甚大な洪水が発生し、11万8千人が避難を余儀なくされた。西アジアも豪雨に見舞われ、アラブ首長国連邦(UAE)では、24時間に259.5mmの極端な降雨を記録し、1949年に記録を開始して以来、最も激しい降水現象の一つとなった。

7月30日には、インド北部ケーララ州で大雨による大規模な土砂崩れが発生した。発生前48時間の降水量は500ミリを超え、この土砂崩れにより350人以上の死者が報告された。

9月下旬、ネパールでは記録的な豪雨が発生し、深刻な洪水を引き起こした。この災害により、少なくとも246人が死亡し、被害額は128.5億ネパール・ルピー(約136.5億円)を超えた。報告書は、同国が事前に対策を講じていたことで、13万人以上の人命救助活動が可能となったことにも焦点を当てた。

■中国では干ばつの被害も

対照的に、中国では干ばつが、約480万人に影響を与え、約33.5万ヘクタールの農作物に損害を与えた。干ばつによる直接的な損失は推定28.9億人民元(約593億円)に上った。

「この報告書が強調しているのは、地表温度、氷河質量、海面といった主要な気候指標の変化だ。これらはアジア地域の社会、経済、そして生態系に大きな影響を及ぼすだろう。異常気象はすでに受け入れがたいほど大きな被害をもたらしている」とWMOのセレステ・サウロ事務局長はコメントした。

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #気候変動

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