山形・最上町、官民協力で木質バイオマス発電事業へ

山形県最上町はこのほど、自然エネルギー発電事業者のZEデザイン(京都市)、および自然エネルギー設備メーカーのZEエナジー(東京・港)と木質バイオマス発電事業の協力に関する覚書を結んだ。ZEデザインが町内に発電出力1000キロワットの木質ガス化発電施設を設置し、2016年10月から発電を始める計画だ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■発電量、町内世帯7割分に相当

最上町は地域の木質バイオマスを利用して官民協力で発電事業に着手する
最上町は地域の木質バイオマスを利用して官民連携で発電事業に着手

最上町は人口約9300人で、面積の8割以上を山林が占める。すでに町内では福祉施設を対象に、町内の間伐材を燃料とする地域熱供給事業を行っているが、今回新たに木質バイオマスを利用した発電にも取り組むこととなる。

ZEデザインが数億円規模で出資し、ZEエナジーが手がける「コンパクトバイオマス発電装置」を町内に設置。今年10月にも着工する。

発電した電気は当初、東北電力に売電するが、2社のいずれかがPPS(特定規模電気事業者)の免許を取得し、同町管内への電力供給が可能となれば、町へ優先的に電力を販売する予定だ。1000キロワットは町内約3千世帯が消費する電力の7割以上に相当する。

また、発電で生じた熱も町内で有効利用する方針。具体的な利用方法などは、町と2社を中心に新たに立ち上げる「最上町バイオマス推進協議会(仮称)」の下で検討するとしている。

■エネルギー支出の町外流出を抑制

町では12年に「最上町スマートコミュニティ構想」を策定。20年までに町内の全エネルギー消費に占める自然エネルギーの比率を20%まで高め、同時に全エネルギー消費量を20%削減するとの目標を掲げる。今回の官民連携による木質バイオマス発電事業も、この構想に沿った取り組みだ。

町全体の年間エネルギー支出の合計は、推計で約20億円にも達する。内訳は暖房や動力、自動車等で消費する化石燃料が13億円、電力が7億円。これらの費用が毎年町外に流出している計算だ。

自然エネルギーの普及などに取り組む町まちづくり推進室の担当者は「発電事業を通じ雇用創出、および発電に必要な木質チップの供給にともなう経済効果の波及に期待している」と話す。町は発電施設が年間に消費する木質チップの量を約1万3千トンと推計。町内を中心に、隣接する地域からも供給するとしている。

全国木材チップ工業連合会の調査では、木質チップ1トン当たりの国内販売価格は1万2千円(7月、岩手県内。輸送費等含まず)。単純計算すれば、木質バイオマス発電を通じて、町内と周辺地域に木質チップ代として年間1億5千万円以上の売上が新たに生じる。

自然エネルギー事業が地域にもたらす経済効果は、地域内で出資する方がより大きい。とはいえ今回、町内での木質バイオマス発電と熱供給が計画通りに実現すれば、エネルギーの地産地消に貢献し、地域に一定の経済効果をもたらすのは間違いなさそうだ。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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