記事のポイント
- ナイジェリアのスタートアップ企業は廃棄物を使ってDIYで誰でも作れるランプを提供する
- アフリカ農村部や難民キャンプなど最も明かりを必要とするところに照明を届ける
- 資源を有効に活用し、太陽光発電式のコミュニティ充電ステーションもつくる
ナイジェリアの企業は、プラごみや電子ごみを使って、誰でも簡単に照明システムをつくれるDIYソリューションを提供する。資源を有効活用するだけでなく、アフリカの農村部や難民キャンプなど、最も明かりを必要とするところに、清潔で修理可能な照明を届ける。難民キャンプではリサイクルされたプラスチックを使って太陽光発電式のコミュニティ充電ステーションもつくる。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

「グローランプ」
ナイジェリアの新興企業ライトエドゥは、太陽光発電を活用したモジュール式のDIY照明システム「グローランプ」を手がける。グローランプに使われているのは、リサイクルされたプラスチックと、電子廃棄物から回収した電子部品だ。
グローランプは、技術的な訓練を受けていない人でも、基本的な工具で簡単に組み立てられることを重視した設計になっている。3Dプリンティングの技術を活用して、プラスチック部品は接着剤を使うことなく組み立てることができる。内部の電子部品は完全なモジュール式で、太陽電池やLEDなどの個々の部品は交換・修理もできる。
すぐに使える照明器具を提供するだけでなく、グローランプの作り方やメンテナンス、修理の仕方などのスキルを教えるワークショップも展開する。同社のスタンレー・アニグボグ創業者兼CEOは、「私たちの活動には、家庭を照らすことは未来を照らすことだという信念がある」と言い切る。
弱冠25歳のアニグボグCEO自身も、幼少期は自宅で灯油ランプやろうそくしか利用できない、エネルギー貧困の苦労を経験した。「エネルギーへのアクセスが、教育、健康、機会と深く結びついていることを実感した」と振り返る。
アニグボグ氏は、工学の学位を持つ母と映画監督の父の間に、5人兄弟の長男として生まれた。友達と外で遊ぶことが許されない家庭環境の中、家の中では科学雑誌や母親の工学書を読み、世界中の著名なエンジニアの話に夢中になった。初めて観た映画『アイアンマン』では、主人公が廃材からロボットを組み立てる姿に、技術的な発明への関心をかきたてられたという。

(c) The Commonwealth
■太陽光発電式のコミュニティ充電ステーションも
同社はこれまで、2万5000人の学生にグローランプを提供し、2000人超の地域住民にソーラー照明技術の導入やメンテナンスに関するワークショップを実施してきた。「子どもたちに知識を与えることは、次の世代に力を与えることでもある。暗闇にいる人々に光を提供し、より良い未来を築くために貢献したい」とアニグボグCEOは意気込む。
ナイジェリアにある2カ所の難民キャンプでは、リサイクルされたプラスチックを活用した太陽光発電式のコミュニティ充電ステーション「ライトハウス」もつくった。モバイルデバイスなどの電子機器の充電を可能にするなど、5000人以上の難民を支援した。
難民学校ではグローランプのワークショップも実施し、難民キャンプで暮らす子どもたちが勉強を続け、必要なスキルを身につけられる機会を提供した。持ち運びできるグローランプがあることで、盗難などの犯罪の減少にもつながり、難民キャンプの治安改善に貢献している。
同社はさらに、太陽光発電を使って、農村部の医療環境の改善にも取り組む。ワクチンや医薬品など、冷蔵保管を伴う重要な医療サービスを、都市から離れた農村部でも利用できるよう、電力を供給する。
国際エネルギー機関(IEA)によると、2023年時点で、世界にはエネルギーにアクセスできない人は6億6600万人に上る。ライトエドゥの目標は、2035年までに500万人を超えるアフリカの人々に、持続可能なエネルギーへアクセスを提供することだ。

リサイクルしたプラスチックを活用する
(c) Lighted