記事のポイント
- EUは域内産業の競争力を高める提言書「競争力コンパス」を公表した
- この提言書では欧州を脱炭素型製品の「拠点」にすることを狙う
- トランプ2.0や脱炭素への巨額の投資を進める中国への対抗策だ
欧州委員会(EU)は1月29日、域内産業の競争力を高める提言書「競争力コンパス」を公表した。ドラギレポートをベースにした、この提言書は「脱炭素化と競争力の両立」など3つの行動分野と5つの横断的施策からなり、欧州を脱炭素型製品の「拠点」にすることが目的だ。安価なエネルギーを推進して、米国や中国との脱炭素競争に挑む。(オルタナ副編集長=池田 真隆)
EUが公表した「競争力コンパス」は、国際政治が混迷する中で、2050年のカーボンニュートラルを目指すためのEUの戦略だ。元欧州中央銀行総裁で元イタリア首相のマリオ・ドラギ氏がまとめた「ドラギレポート」と元イタリア首相のエンリコ・レッタ氏による「レッタレポート」を具体化したものだ。
ドラギレポートでは、米国との成長性・生産性を埋めるため、毎年国内総生産(GDP)の5%に及ぶ投資を行い、脱炭素化とデジタル化を進めるべきだと提言した。レポートでは、この投資額は、「マーシャルプラン」を超える規模だと強調した。
レッタレポートもドラギレポートと同様に、脱炭素化とデジタル化を提言した。特に、デジタル化の点では、AI技術などへの研究の強化を課題に挙げた。加えて、米国に依存した軍事産業から転換し、欧州に雇用をもたらす軍事政策の重要性を打ち出した。
■「脱炭素化と競争力」など3つの重点分野を掲げる
■「CSRD」などESG関連規制の緩和も盛り込む
■米・中の巨額の「脱炭素国家補助金」に対抗へ