EUでも台頭する右派・極右、脱炭素と多様性の行方は

記事のポイント


  1. EUでも右派・極右の勢いが止まらない
  2. 昨年6月のEU欧州議会選挙では、右派・極右が25%を獲得した
  3. こうした勢力の拡大で脱炭素やダイバーシティ施策はどうなるのか

EUでも右派や極右勢力が台頭してきた。こうした勢力の拡大によって、脱炭素やダイバーシティ施策はどうなるのか。EU政治に詳しい、臼井陽一郎・新潟国際情報大学教授に寄稿してもらった。

ヨーロッパの右派・極右の勢いが止まらない。

2月23日実施のドイツ連邦議会選挙では、ドイツのための選択肢(AfD)がついに第2党に躍進した。ヨーロッパ各国の流れは、リベラルデモクラシーの優等生ドイツのもとでも変わらなかった。

昨年6月のEU欧州議会選挙では、右派・極右が25%を獲得した。直後のフランス議会選挙でも国民連合(RN)が大躍進、9月にはオーストリア自由党が比較第一党を獲得している。

ナチ的なもの、ファシズム的なものを随所に垣間見せる右派・極右勢力の継続的拡大は、決して一過性の動きではない。しかも第二次トランプ政権の副大統領バンスがヨーロッパの右派・極右を応援するという、これまでの大西洋関係では考えられなかった事態が生起している。

この傾向が継続しさらに強まっていけば、人権・環境/社会正義・ジェンダー平等を目指すというEUの装いは、剥ぎ取られてしまいかねない。

右派・極右はキリスト教文明と伝統的家族主義を重視する

特に反移民・反難民については、多文化共生や多様性の社会的包摂を嫌悪する思考とも根っこの部分で繋がるため、注意が必要だ。EUが構築してきたリベラリズムを毀損する思想でもある。

EUは差別禁止にゼロ・トレランス・アプローチを採用し、ジェンダー、LGBTQ、人種的民族的起源、宗教・信条、障がい、年齢の6項目をターゲットにしている。まさに包括的だ。

しかしキリスト教文明と伝統的家族主義を重視する右派・極右勢力は、欧州委員会の取り組みに非難すべきウォーキズムを見出している。第二次トランプ政権が進める反DEIの動きもみるに、副大統領バンスと並んで腹心イーロン・マスクが支援するヨーロッパ右派・極右の勢力拡大は、EU版ダイバーシティの行方に暗い影を落としている。

「反グリーンディール」などで事実上のアライアンスが

EU加盟国の政権に参加した右派・極右政党の一覧を確認しておこう。EUの欧州議会に形成された右派・極右政治グループごとにまとめてみたい。広範に浸透していることが見て取れるだろう。

ECR(欧州保守改革者グループ)
  イタリア(イタリアの同胞FdI) 
  チェコ(市民民主党ODS) 
  フィンランド(フィン人党PS) 
  クロアチア(祖国運動DP) 
  ベルギー(新フラームス同盟N-VA) 
  スウェーデン(スウェーデン民主党SD)※閣外協力

PfE(欧州のための愛国者グループ)
  ハンガリー(フィデス) 
  イタリア(同盟) 
  オランダ(オランダ自由党)
 ※フランスでは国民連合(RN)が第3党
 ※チェコではANOが次回選挙で政権入りの勢い

ESN(主権国家の欧州グループ)
  なし 
 ※ドイツのための選択肢(AfD)が第2党に躍進

欧州保守改革者(ECR)は反プーチン、欧州のための愛国者(PfE)および主権国家の欧州(ESN)は親プーチンという一般的傾向がみられ、その点ではヨーロッパの右派・極右は割れているものの、反グリーンディールや反移民・反難民については、同一投票行動にも繋がる事実上のアライアンスが形成されようとしている。

仏国民連合(RN)所属で欧州のための愛国者(PfE)のリーダ-でもあるバルデラをはじめとして、右派極右議員たちの連携へ向けた動きが活発だ。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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