記事のポイント
- マツダが排気管からCO2を回収する独自開発装置の実証実験を開始した
- 藻類由来の次世代カーボンニュートラル燃料も研究開発している
- ただし、回収したCO2の活用には課題が残る
マツダは独自開発の車載用CO2回収装置の実証実験を始めた。11月に開催されたスーパー耐久レースの車両にCO2回収装置「マツダ モバイル カーボン キャプチャー」を初搭載し、カーボンニュートラル燃料(バイオディーゼル燃料)を使用して走行した。同社は排出ガス中のCO2を吸着できることを実証した。(経済ジャーナリスト・海藤秀満)

■車の排気管からCO2を回収
マツダが独自開発したCO2回収装置は車体後部の排気管部分に装着し、走行中の車の排出CO2を回収する。燃料にはカーボンニュートラル燃料(バイオディーゼル燃料)を使う。回収したCO2は装置のタンクに蓄える。実証実験を重ね、実用化に向けて本格的な検証に入る。
バイオディーゼル燃料で約90%のCO2排出量を削減でき、CO2回収装置で排気ガス中のCO2の20%を回収、トータルでマイナス10%のカーボンネガティブを達成する。

■微細藻類由来の次世代カーボンニュートラル燃料
マツダが研究している微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料とは、植物由来のバイオ燃料の一種。藻類は大気中のCO2を吸収し、バイオ燃料として注目されている。マツダは地元の広島大学と次世代のバイオ燃料を共同研究していて、使用済み食用油と微細藻類を使用する。製造にはユーグレナが参画する。
マツダは、2035年までに「走るほどにCO2を減らす」モビリティの実現を目標に掲げている。
■課題はエコシステムの構築に
課題は、次世代バイオ燃料の製造コスト、回収タンクの限界、回収装置搭載による車両重量や室内空間への影響、回収したCO2の活用などだ。
欧州では導入が進んでいるバイオ燃料だが、日本での導入はまだ少ない。2025年の政府エネルギー基本計画で、バイオディーゼル燃料の導入推進が明記されたが、現状は供給インフラの整備不足もある。

回収したCO2をどう有効活用するか、エコシステムの構築も必要だ。このシステムに取り組むのは自動車会社ではまだマツダ一社だけなので、普及のためにはガソリンスタンドや自動車販社、リース会社、CO2の社会への有効活用など、広範なパートナーの参加が必要だ。
マツダの技術研究所・次世代環境技術研究部門・炭素循環研究長の原田雄司さんは「サプライチェーンを含めたこのシステムへの多くのパートナー企業や団体の参加が今後の重要な課題だ」と語る。「ディーゼル」で独自路線を走るマツダの挑戦が注目される。



