記事のポイント
- 英国は今月5日からジャンクフードの広告を禁止した
- 子どもの肥満防止対策が目的だ
- 企業には、消費者としての「子どもの権利」への配慮と対応が求められる
英国は1月5日から、ソフトドリンク、チョコレート・菓子類、ピザ、アイスクリームなど、ジャンクフードの広告を禁止した。子どもの肥満防止対策が目的だ。世界的に子どもの肥満が社会課題となる中、企業には消費者としての「子どもの権利」への配慮と対応が求められる。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

英国は、2022年に成立した保健医療法に基づき、2026年1月5日から、脂肪、塩分、砂糖を多く含むHFSS(High in Fat, Salt, or Sugar)食品・飲料の広告を禁止した。午後9時以前のテレビ広告と、オンライン有料広告は24時間が禁止となった。
HFSS食品には13の製品カテゴリーがあり、違反すると、英・広告基準局(ASA)が措置を講じる。
HFSS食品として示されたものは、添加糖を含んだ清涼飲料水、ポテトチップス、グラノーラや即席シリアル、チョコレート・キャンディなどの菓子類、アイスクリーム、ケーキ及びカップケーキ、ナッツや種子・穀物を1つ以上原料とする甘いビスケットやバー、菓子パン類(スコーン、ワッフル、ベーグル、マフィンを含む)、プディングやパイ、砂糖などで甘みを加えたヨーグルト、ピザ(プレーンピザ生地を除く)、スイートポテトやハッシュブラウン、あらゆる種類のサンドイッチなどだ。
英国・国民保健サービス(NHS)によると、英国では就学前児童の10人に1人(約9.2%)が肥満状態で、5歳までに5人に1人の子どもが虫歯を患っているという。NHSは肥満によって年間110億ポンド以上の費用が発生していると推定しており、英政府は、今回の広告禁止措置により、約2万件の小児肥満症例を防止できると推定する。
英ハートフォードシャー大学で健康行動変容学を専門とするキャサリン・ブラウン教授は、今回の禁止措置について「遅きに失したが、正しい方向への一歩だ」と英メディアにコメントした。「子どもたちは不健康な食品のアグレッシブなマーケティングにとても影響を受けやすい。それらにさらされることで肥満や慢性疾患の発症リスクが高まる」(同)
■英食品各社、広告媒体の移行を進める
英国で本規制が発表された2020年7月以降、食品各社は、広告媒体をテレビやオンラインから屋外広告へと移行を進めたようだ。
看板やポスターなど屋外での広告に関しては、禁止されるエリアが学校やレジャー施設などから100メートル以内に設置されている場合のみに限定されているからだ。実際、英NGOのフード財団が2025年12月に公表した報告書によると、食品企業の屋外広告費は、2021年から2024年にかけて28%増加し、なかでもマクドナルドは、屋外広告費を同期間で71%増やした。
同財団のアンナ・テイラー事務局長は、「今回の規制では、企業が製品広告からブランド広告へと切り替えることを認めている。これによって、規制の効果が大幅に弱まる可能性もある」と指摘する。「ここで止まってはいけない。子供向けジャンクフード広告の全面禁止という目標に引き続き集中し続けなければならない」とコメントした。
■子どもの健康課題は今や「肥満」がメインに
子どもの肥満は、英国に限らず、世界的な社会問題となっている。
日本の場合、5~19歳の肥満率は2000年以降4%程度と横ばいで推移しているが、ユニセフ(国連児童基金)が昨年9月に発表した子どもの栄養に関する報告書によると、5~19歳の10人に1人、およそ1億8800万人が「肥満」状態にあるという。
同報告書によると、2000年以降、5~19歳までの低体重の割合は約13%から9.2%に低下した一方で、肥満の割合は3%から9.4%に増加した。世界では、サハラ以南のアフリカと南アジアを除く全地域で、肥満率が低体重率を上回る。
最も肥満率が高いのは太平洋島嶼国で、ニウエでは同年代の38%、クック諸島では37%となっている。伝統的な食生活から、安価で高カロリーな輸入食品中心への食生活への変化が主たる要因だ。高所得国でも、チリは27%、米国やアラブ首長国連邦は21%が肥満状態となっている。
ユニセフの報告書は、砂糖や精製されたでんぷん、塩分、不健康な脂肪、添加物を多く含む超加工食品やファストフードが影響しており、それは子ども自身の選択によるものではないと警鐘を鳴らす。
■企業に求められる「子どもの権利とビジネス」の視点
HFSS食品は、子どもの栄養や肥満等に関係し、また、子どもが食べたがり、興味を持つことが多い。食品セクターの企業にとっては、「子どもの権利とビジネス」という視点で、消費者としての子どもの健康への影響に配慮した取り組みが求められる。
「子どもの権利とビジネス」に詳しい日本総合研究所の村上芽チーフスペシャリストは、オルタナの取材に対し、「食品分野のビジネスと『子どもの権利』の関係は、バリューチェーン上流の、輸入農産物の生産地での児童労働問題が注目されがちだった。児童労働問題の重要性は変わらないが、バリューチェーンの上流に限らず、製品を通じて顧客に及ぼす影響(バリューチェーンの下流)への関心が高まっている」と話す。
「英国のように、子どもの肥満がクローズアップされることもあるが、国民全体で肥満率が深刻なチリでは、2016年から、カロリー・糖分・塩分・飽和脂肪酸を多く含む飲食物のマーケティングを規制した。これは子どもに限らない規制だ。本規制が施行以降、例えばおもちゃ入りのシリアルなど、そうした対象製品を『買わないで』と子どもが親に頼むようになったという研究もある。子どもは自分の健康も親のことも気にかけている」(村上氏)
「また、ジャンクフードという括りではなく、スウェーデンやノルウェーでは12歳未満の子どもをターゲットとしたCMを全面禁止している」(同)
■先進企業、「子どもの権利」の視点でマーケティングを見直す
■国内製菓企業では明治HDの取り組みが進む

