ホルムズ海峡封鎖: 世界一中東に石油を依存する日本の今後は

記事のポイント


  1. 日本向け原油の約9割、LNGの6%が通過するホルムズ海峡が事実上封鎖となった
  2. 世界の中で、石油の中東依存度が最も高いのが日本だ
  3. 石油に頼らないEVや再エネなど次世代燃料の普及が今後の喫緊課題だ

イラン情勢の影響でホルムズ海峡が事実上封鎖となった。ホルムズ海峡は、日本向け原油の約9割、LNGの6%が通行する。世界の中で、これだけ石油を中東に依存しているのは日本しかない。今後は、石油に頼らないEVや再エネなど次世代燃料の普及をしていくことが、日本のエネルギー安全保障を高めることになる。(オルタナ客員論説委員・財部明郎)

日本は世界でも最も中東に石油を依存している国だ

2月28日、イランとの交渉の最中に米国とイスラエルが突如イランを攻撃。イランの最高指導者ホメイニ師を殺害したうえ、イランの軍事施設を空爆し始めた。これに対してイランはイスラエルや湾岸諸国の米軍基地などをミサイルやドローンによって攻撃するとともに、反撃の一環としてホルムズ海峡を事実上封鎖してしまった。

1973年に発生した石油ショック以来、日本の石油供給の脆弱性が指摘されてきたが、その最大の懸案がこのホルムズ海峡封鎖である。この海峡には日本向けの原油の約90%、LNGの6%が通っている。

石油ショック当時は、実際に石油輸入が途絶えたわけではない。にもかかわらずわが国は大パニックとなった。銀座のネオンが消え、深夜のテレビ番組は放送中止となり、スーパーの棚からトイレットペーパーが消えた。

それに比べると、今回のホルムズ海峡閉鎖では、実際に石油の流れが止まった。にも拘らずわが国は意外と平穏である。これは石油ショック当時の状況を知る筆者としては、拍子抜けするほどである。

もちろん、当時と今は状況が違っている。日本政府は石油ショック以来、石油火力発電所の新設を禁止し、石油備蓄を充実させ、原油輸入先を多様化するという対策を取ってきたからだ。このうち最初のふたつの対策は成功していると言えるだろう。

石油ショック当初、石油火力は日本の発電量の約6割を占めていた。しかし現在、石油火力が発電量に占める割合はわずか7%ほどまで下がっている。だから石油の輸入が止まったとしても、石炭やLNG火力発電が少し増えるだけで、電気が止まることはない。

次に石油の備蓄であるが、これは国家備蓄と民間備蓄を合わせて現在、約8か月分が積み上がっている。

つまり、ホルムズ海峡が封鎖されて原油が日本に入ってこなくなっても電気が止まることはないし、8か月分の備蓄もある。これが今のところ国内が比較的平穏な理由だろう。

しかし、原油輸入先の多様化という対策は残念ながらうまくいかなかった。石油ショック以降、日本は中東以外の輸入先を模索してきた。例えば、東南アジアや南米、アフリカ、ロシアなどである。しかしながら、どれも輸入量を増やすことができず、結局、現在の日本の中東依存率はなんと93%に達しているのである。

原油が入らなくなったらどうなるのか

では原油の輸入が止まったら、あるいは大幅に減少したら、我が国はどうなるのだろうか。このグラフは昨年(2025年)の日本の石油製品の販売実績、つまり需要である。

2025年の石油製品の販売実績(需要)

原油の用途として、かつては発電用の重油がかなりの割合を占めていたが、すでに述べたように、今は石油火力発電向けC重油の需要はほとんどない。現在の主な原油の用途はガソリン、軽油および化学産業用の原料として使われるナフサで、これで国内石油製品需要の約8割を占める。

原油の輸入が止まれば、これらの石油製品は国内の製油所ではほとんど生産されなくなるから、8か月分の備蓄を使い果たすと本当にガソリンスタンドからガソリンや軽油が消えてしまうことになる。特に軽油がなくなるとトラック輸送や船舶輸送ができなくなる。

石油がなくても電力は止まらないから、工場は稼働できるかもしれない。しかし、物流が止まると原料が手に入らなくなり、製品の出荷もできなくなる。つまり日本の製造業は壊滅的な打撃を受ける。

また、ナフサも大幅に不足することになる。

実は、日本の製油所で生産されるナフサは国内需要の3割程度しかなく、残りの7割はUAE、クウェート、カタール、韓国などからの輸入である。国内生産分については備蓄原油を使って生産できるが、UAEやクウェートなどの中東諸国からの輸入分はホルムズ海峡が封鎖されると輸入できなくなる。また韓国は日本と同様に大量の原油をホルムズ海峡経由で輸入しているから、ここもやがては輸出できなくなる。

したがって、ナフサはガソリンや軽油のように8か月備蓄の猶予はない。実際、日本の石油化学コンビナートの中には既に減産を開始したり、操業停止の可能性を取引先に通知したりしているところがでてきた。

ナフサはエチレンセンターで分解されて、様々なプラスチックや合成ゴム、合成繊維などの原料となるから、ナフサがなくなるとこれらの化学製品も生産できなくなる。プラスチックや合成ゴムは様々な機械製品の材料となっているから、わが国製造業全体に大きな影響を及ぼすことになる。

■代替手段も効果は小さい
■中東依存度がこれだけ高いのは世界中で日本だけ
■今後は石油に頼らないEVや次世代燃料を普及させるべき

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財部 明郎(オルタナ客員論説委員/技術士)

オルタナ客員論説委員。ブロガー(「世界は化学であふれている」公開中)。1953年福岡県生れ。78年九州大学大学院工学研究科応用化学専攻修了。同年三菱石油(現ENEOS)入社。以降、本社、製油所、研究所、グループ内技術調査会社等を経て2019年退職。技術士(化学部門)、中小企業診断士。ブログでは、エネルギー、自動車、プラスチック、食品などを対象に、化学や技術の目から見たコラムを執筆中、石油産業誌に『明日のエコより今日のエコ』連載中

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キーワード: #地政学#脱炭素

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