三井住友FGが脱炭素枠組み脱退、「1年前と同じ構図」の声も

記事のポイント


  1. 三井住友FGは3月4日、国連による脱炭素枠組み「NZBA」から脱退した
  2. 米では反ESGの動きとしてNZBAに基づく活動が反トラスト法違反との見方が
  3. 脱退したが脱炭素への活動を続ける意志を示す同行に脱退の必要性を問う声も

三井住友フィナンシャルグループ(三井住友FG)は3月4日、国連による脱炭素枠組み「NZBA」から脱退した。NZBAは金融機関向けの国際イニシアティブで、2050年までに投融資ポートフォリオにおける温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにすることを約束した金融機関が加盟する。NZBAから脱退したが、気候変動対策の方針を掲げ続ける三井住友FGに対して、専門家からは「あえて脱退する必要はなかったのではないか」との声も上がっている。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

NZBAは「ネットゼロ・バンキング・アライアンス」という名称の国際イニシアティブだ。パリ協定で定めた「1.5℃目標」の達成を目指すため、国連が立ち上げた。

NZBAによって、金融機関の脱炭素への取り組みを「比較」できた

金融機関がNZBAに加盟するには、2050年までに投融資ポートフォリオにおける温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを宣言する必要がある。加えて、「1.5℃目標」の達成に向けて、科学的根拠に基づいたGHG排出削減シナリオの公開や進捗の報告が条件だ。共通の枠組みで取り組み状況を開示することで、各金融機関の「比較可能性」が高まり、脱炭素に向けた取り組みを促すことが狙いだ。

NZBAには、44カ国・地域の135金融機関が参加する。三井住友FGが脱退したことで、日本の金融機関で加盟している企業数は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、農林中央金庫、野村ホールディングスの5社になった。

三井住友FGが脱退した背景には、米国で起きている「反ESG」の動きがある。米国では共和党議員を中心にNZBAに基づく活動が反トラスト法違反との見方が高まる。

こうした訴訟リスクを懸念し、同国ではNZBAから脱退する金融機関は増えている。2024年12月に、シティグループとバンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン、ウェルズ・ファーゴが相次ぎ脱退し、1月7日にはモルガン・スタンレーも脱退を表明した。

日本の金融機関で、三井住友FGに続いてNZBAからの脱退を表明した企業は出ていないが、その動向に注目が集まる。

「気候変動の取り組み続けるなら、あえて脱退する必要性はなかった」
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三井住友FGのGHG排出量、30年目標と大きな乖離が

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #脱炭素

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