記事のポイント
- 生成AIはデータセンターで電力を大量消費するとの見方が広がった
- マイクロソフト、グーグル、アマゾンも原発電力の調達を急ぐ
- だが米専門家は「生成AIが増えても日本の電力は足りる」と断言した
マイクロソフト、グーグル、アマゾンなど米国の巨大テック企業が相次ぎ、原子力への投資を発表した。生成AIの普及拡大を見越し、データセンターの電力需要増への対応が狙いだ。だが、エネルギー問題に詳しい専門家は、「どれだけ生成AIが伸びても、日本で電力が足りなくなることはない」と指摘した。(オルタナ副編集長=池田真隆、同・北村佳代子)

(c) Constellation Energy
■マイクロソフトは「スリーマイル島原発」を再稼働させた
マイクロソフトは2024年9月、エネルギー大手のコンステレーション・エナジーと20年間に渡る電力購入契約(PPA)を締結した。この契約を通じて、コンステレーション・エナジーは、ペンシルベニア州のスリーマイル島にある原子力発電所を再稼働すると発表した。
スリーマイル島原発は、1979年に米国史上最悪の原発事故を起こしたことで知られる。コンステレーション・エナジーは再稼働時期を2028年と見込む。出力80万キロワット超の原発となる。
■グーグルやアマゾンは新興企業の小型原子炉開発を後押し
グーグルとアマゾンは、新興企業による小型モジュール式原子炉(SMR)の開発支援に乗り出した。小型モジュール式SMRは、「次世代原子力技術」の一つだ。
その特徴は、従来の原子力発電所と比べて大きさがコンパクトな点にある。従来比で10分の1のサイズのものもあり、安全性も高いとされる。規格に基づいたモジュール(部品)を組み合わせるため、低コストで効率的になるとされる。
グーグルは10月14日、小型原子炉を開発する新興企業カイロス・パワー社の小型モジュール式SMRの建設を支援すると公表した。
グーグルは、カイロス・パワーが開発する7基分の小型モジュール式「SMR」の建設を支援する。カイロス・パワーは、1基目の小型モジュール式SMRを2030年までに稼働させる予定だ。2035年までに7基すべての稼働を目指す。グーグルは今回の契約で500メガワットの電力供給を見込む。
SMRは新技術であり、世界でもほとんど商業利用されていない。グーグルはこの契約によって、小型モジュール式SMRから原子力エネルギーを購入する世界初の企業になった。
グーグルの公表から2日後の10月16日、アマゾンも新興企業の小型モジュール式SMRの開発を支援すると発表した。Xエナジーが開発する、小型モジュール式SMRの商業利用を目指して、約5億ドル(750億円)を出資した。
この資金調達によって、Xエナジーは2039年までに米国で5ギガワット以上の電力供給を見込む。
■バイデン政権、次世代原子力技術に9億ドル拠出も
米エネルギー省(DOE)は10月21日、増大するクリーンエネルギー需要を受け、次世代原子力技術の支援に9億ドル(約1400億円)の資金を拠出すると発表した。
DOEのグランホルム長官は、「米国の原子力部門の活性化は、成長する経済のニーズに応えるカギとなる」と声明を出した。
ジョン・ポデスタ大統領上級顧問(国際気候政策担当)も、「次世代原子力技術は、将来のクリーンエネルギーセクターを構築する上で、重要な役割を果たすだろう」とコメントした。
DOEは、米国がネットゼロを達成するには、2050年までに700~900ギガワットのクリーンエネルギーが新たに必要と見積もる。
巨大テック企業による相次ぐ、原子力回帰を、多くの米メディアは前向きに報じる。しかし素朴な疑問もある。
本当に電力は足りなくなるのか。再エネ目標はどうなったのか。小型原子炉(SMR)は安全なのか。
■疑問1:本当に電力は足りなくなるのか
■疑問2:再エネ100%目標はどうなった
■疑問3:小型原子炉は安全なのか