東証の排出量取引市場が1カ月で失速、その背景は

記事のポイント


  1. 東証が排出量取引所を開設して約1カ月が経過した
  2. 出足は一日平均1200トンだったが、現状は400トン以下が続く
  3. 失速した背景には「キャップなしトレード」という日本独自の仕組みがあった

東証が10月11日に排出量取引所を立ち上げて、明日で1カ月を迎える。開設から8日で累計売買高が1万トンを超える盛況ぶりだったが、その後は急減した。経産省は年内にも「マーケットメイカー制度」を活用し、政府保有株を大量に投入し、流動化を狙う。2024年度10月からは、GXリーグに参画する企業同士で超過削減枠を売買できるようにするが、自主的な取引だ。そもそも、排出量取引がなぜ開始1カ月で失速したのか。その背景には、「キャップなしトレード」という日本独自の仕組みがあった。(オルタナS編集長=池田 真隆)

排出量取引の価格を公示価格にして、脱炭素化への予見可能性を高める

東証は10月20日、カーボンクレジット市場を開設して8営業日で累計1万44トンの売買が成立したと発表した。一日の平均が1255トンと好調だったが、その後勢いは急激に失速した。10月21日以降は400トン以下が続く。

市場を開設して1カ月での累計売買高は約2万トンの状況に、「キャップなしトレード」を指摘する声が出始めた。本来、排出量取引は総量規制があって成り立つ制度だ。

年内に大量の政府保有株を市場投入へ

だが、経産省のGXリーグを管轄する環境経済室の担当者は、「この1カ月の売買状況と総量規制は関係がない」と言い切る。

その理由は、市場に流れた量が少ないからだ。東証の市場には、Jクレジットを年間5~60万トン流す予定だ。まだ2万トン程度の取り扱いなので、規制とは関係がないと言う。

経産省としては市場の流動化を目指し、年内に「マーケットメイカー制度」を活用して、政府保有株を大量に市場に投入する。銀行や証券会社などがマーケットメイカーになり、前日の終値を基準に売り注文と買い注文を同時に出す。

「年内にかなりの量のJクレジットを、マーケットメイカーを通して市場に流す。一点モノの取引もできるようになり、流動化を期待できる」と話した。

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Jクレジットを「削減貢献」として扱う
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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #排出量取引#脱炭素

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