■オルタナ84号(2026年3月発売号)特集「ウェルビーイング 分断の時代こそ」から転載
積水ハウスは、2001年から「5本の樹」計画を進めている。これは、住宅の植栽に地域の在来樹種を採用することで、生物多様性を回復させる取り組みだ。同計画は自然環境の保全だけでなく、在来樹種に集まる生物とのふれあいを通して人のウェルビーイングにも寄与する。(オルタナ副編集長=長濱慎)

■鳥とのふれあいが鬱症状の緩和に
「5本の樹」計画は、積水ハウスが1999年に策定した「環境未来計画」に基づき、2001年に始まった。プロジェクト名の「5本の樹」は「3本は鳥のため、2本は蝶のために」という意味に由来し、25年間で植えた在来樹種の植栽は累計2000万本を超える。
2019年に琉球大学と行った共同検証では、計画を行わなかった場合と比べて在来樹の種類が10倍、鳥類は2倍、蝶類は約5倍に増えるという結果が得られた。
2022年12月からは、東京大学大学院農学生命科学研究科と共同で、メンタルヘルスに及ぼす効果についての研究を実施。居住者のウェルビーイング向上に大きく関係することも確認した。
一例として、身近な生き物(主に鳥)を見たり鳴き声を聞いたりする頻度が増えると、うつ症状の発症リスクが20ポイント減少する。在来樹種が増えることで生きもの(主に昆虫)に触れる機会も増え、環境配慮意識が高まることも推定された。
さらに、年間の開花期間が長い庭や食用の実が豊富な庭が、住人のウェルビーイングにプラスに作用する傾向も示唆された。この結果をもとに、今後はより多様な形質(花の香りや色など)を考慮した分析を行い、ウェルビーイング向上に最適な植栽の在り方も検討するという。
■地域のウェルビーイングへのポテンシャルも
積水ハウスのシミュレーションによると、国内の住宅着工予測の約3割の物件で同様の取り組みを行った場合、1社単独で行う2倍の生物多様性保全効果が見込まれるという。同社の環境推進部は「5本の樹」計画が地域の自然ネットワーク形成の一翼を担い得るとして、こうコメントする。
「計画の効果は居住者だけでなく、近隣地域にも波及していくと考えている。多くの住宅を供給するハウスメーカーが同様のアプローチを実践することで、街全体として自然と共生する環境づくりが進み、結果として地域のウェルビーイングにも寄与すると期待している」



