記事のポイント
- ホルムズ海峡危機の影響で、石油製品需要の25%を占めるナフサの不足が深刻だ
- 原油から精製されるナフサは、国内需要の3分の2を輸入に頼っている
- なぜ、ガソリンや軽油の不足より、ナフサ不足の方が深刻なのかを解説する
ホルムズ海峡危機の影響で、石油製品需要の25%を占めるナフサの不足が深刻だ。原油から精製されるナフサは、国内需要の3分の2を輸入に頼っている。なぜ、ガソリンや軽油の不足より、ナフサ不足の方が深刻なのかを解説する。(オルタナ客員論説委員=財部明郎)

(写真は沖縄県うるま市の石油備蓄基地)
米国・イスラエルが2026年2月28日、突如イランを爆撃し、最高指導者ハメネイ師を殺害したことから対イラン戦争が始まった。イランは対抗手段としてホルムズ海峡を事実上封鎖した。その結果、湾岸諸国から輸送される原油の流れが止まった。
わが国には約8カ月分の石油備蓄があるが、その備蓄を使い果たす前に原油から精製されるナフサの不足が深刻となっている。
ナフサはなぜ原油より先に不足し始めているのか。ナフサが入手できなくなると、どのような問題が起こってくるのか。そもそもナフサは石油精製によって必ず出てくる余り物ではなかったのか、などについて解説する。
■ナフサは石油製品需要の4分の1を占める
わが国で消費される石油製品のうち、最も需要の多いのがガソリンだ。これが全石油製品の32%を占める。そして次に多いのがナフサで、石油製品需要の約25%を占める。
ガソリンもナフサも原油を蒸留して作られる。だが、この方法では特定の製品だけを優先的に作ることができず、各石油製品が一定の割合で生成してくる特徴がある。これを「連産品」という。
原油を蒸留して出てくる石油製品の割合は原油の種類や蒸留方法によって多少違う。だいたいガソリンが15%、ナフサが10%程度だ。そして需要が最も少ない重油が30~50%もできてしまう。
この数字を見て気づかれた方も多いと思うが、原油を蒸留して生産されるガソリンやナフサ、重油の割合と、実際の石油製品の需要との間には大きなギャップがある。
ガソリンについてみると、原油の蒸留で得られた割合だけでは大幅に不足する。そこで、製油所では需要の少ない重油を原料としてこれを分解装置で分解してガソリンを作っている。日本で消費されているガソリンの約半分が実は重油を分解して作られているのだ。
ではガソリンと同様に需要の多いナフサはどうするのか。重油を分解して作る方法もないわけではないが、実際には輸入に頼っているのが現状だ。つまりガソリンは不足分については重油を分解することによって補うことができるが、ナフサの不足分はそれができないので輸入に頼っているということになる。
2024年の統計によると、ナフサの国内需要は3,483万キロリットル。これに対して輸入は2,336万キロリットルだから、なんと国内で消費されるナフサの3分の2は輸入品なのである。
「ナフサは原油を蒸留すると必ずできてくるが、使い道のない余り物で、仕方がないのでこれでレジ袋を作って無料で配っている。そうしなければ石油会社はナフサを捨ててしまうことになる」といった話を聞いたことのある人もいるかもしれないが、この話は事実と異なるフェイクである。
ナフサは「余りもの」どころか、国内生産だけではまったく足らず、大量の輸入によって不足分を補っているのが現状だ。
■原油の備蓄はあってもナフサの備蓄はない
ではどこからナフサを輸入しているかというと、その多くはUAE、クウェート、カタールの中東諸国と、お隣の韓国だ。この4カ国で輸入量の8割を占める。

ホルムズ海峡が事実上封鎖され、原油だけでなくナフサ運搬船もここを通過できなくなった。当然、ナフサの輸入先である中東諸国からの輸入も途絶えている。
韓国からの輸入船はホルムズ海峡を通らないが、そもそも韓国の原油輸入先の70%が中東であるから、中東からの原油が途絶えれば、ナフサも生産できなくなり、日本への輸出も止まっている。
原油の輸入が止まっても8カ月分の備蓄があるから、日本の製油所はその期間は石油製品の生産を継続し、ナフサも生産されるだろう。
しかし、すでに述べたように国産ナフサは需要量の3分の1しかない。輸入ナフサの備蓄義務はないから、輸入ナフサが止まれば、すぐにナフサ不足となる。ホルムズ海峡封鎖の影響はガソリンや軽油の不足より、ナフサ不足の方がずっと早く訪れることになる。
■ナフサは何に使われているのか
■ナフサが不足するとどうなるのか

