■「世界を変える企業50社」とサステナビリティの共通言語SDGs
今回の選定リストを見ると、先進国・途上国を問わず適用されるサステナビリティの共通言語SDGs、つまり、国連の「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の17目標とも符合した特色ある事例集といえる内容となっており、参考になる。
今後ますます世界的視野での事業価値と社会価値の同時実現へのチャレンジが求められる。持続可能性、すなわち、サステナビリティという外来語も分かりにくいが、要は「世のため、人のため、自分のため、そして子孫のため」という世代軸が入った概念だ。
「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」は昨年9月の国連で採択された「われわれの世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」という文書で示された。2030アジェンダの文書は、国際社会で次々と重要な局面で引用されている。
例えば先進7カ国(G7)による主要国首脳会議( 伊勢志摩サミット)の首脳宣言でも、その歴史的意義について、「2015年は、2030アジェンダの歴史的な採択、パリ協定、アディスアベバ行動目標と共に、全ての国における貧困削減及び持続可能な開発へのわれわれのアプローチにおける新たな時代の幕開けとなった」と確認された。
このアジェンダは、持続可能な開発の「環境、社会及び経済という三つの側面を均衡ある形で統合し、全ての国に普遍的に適用される」とした。また、2030年までに「誰一人置き去りにせず」繁栄する国際社会のための基礎を築くため、「世界を持続可能なものに変革する」としている。
SDGsは国連で幅広い関係者の議論を経て策定されたもので、持続可能な世界・社会づくり、「サステナビリティ」の共通言語を示したものと理解できる。SDGsは、国際社会全体のサステナビリティ目標として2030年を期限とする包括的な17の目標と169の指標を設定した。これを分かりやすいピクトグラム(図は国連センター作成版)で示しているので、よく理解して活用していくべきだろう。
■東京五輪とSDGs
SDGsは、先進国、途上国を含む普遍性(Universality)が特色だ。しかし、「Development」が「開発」と訳されているため、途上国を想起させる。そのためSDGsはとかく途上国への政府開発援助(ODA)などの議論に特化しがちであるが、先進国にも適用されるものである。本来は「開発」よりも「発展」と訳す方が先進国にも適用させやすい。
例えば、準備が加速してきた東京五輪・パラリンピックにも関連してくる。世界イベントを資材調達からイベントの実施方法まで持続可能な世界標準の形で開催しなければならない。五輪は「世界が東京に来る」ことを意味している。日本人は世界標準で「おもてなし」をすることが期待されている。そのためも国際的羅針盤が必要で、共通言語SDGsが役立つ。