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2.グローバル課題の解決に向けて
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持続可能な発展には、現世代と将来世代間の公平を保つことに加えて、現世代における公平すなわち経済的格差の是正が含まれる。貧困問題は人類が抱えるもうひとつの大きく重たい課題である。そしてまた、フィランソロピー活動だけではなく本業ビジネスを通じた課題解決、つまりInclusive businessは損保ジャパンが力を入れているテーマでもある。貧困に焦点を当てて途上国の社会的課題の解決にどう貢献するか。この点に関しては、損保ジャパングループの2つの取り組み事例をあげたい。

まず第一は、インドにおける2008年からのマイクロインシュアランス販売である。インド国営銀行との合弁保険会社ユニバーサルソンポ社を通じて、人口の7割以上を占める低所得者層である農業従事者の生活基盤を支えるために、疾病保険や家畜保険で販売実績を積み重ねている。インドの農村で浸透してきたマイクロファイナンスにおいて、保険は融資のバックアップとなり、農民が融資を受けやすくなる。そして生活安定のための農村部における保険の普及はインド政府の国策でもある。現在はさらに幅広い補償機能を加えた新たなパッケージ保険も開発中だ。

第二の例は、気候変動によって深刻な被害を受けるタイ東北部の農村における事例である。干ばつによる収入減の打撃をこうむる稲作農業従事者のために、降雨量を指標にした天候インデックス保険を2010年から販売開始した。干ばつで収入が途絶えると農民は最悪の場合、食いつなぐため農地を売ってしまう。生産手段を失った農民は二度と貧困の淵から這い上がれない。こうした脆弱な農民の経済基盤の安定化に資すると期待が寄せられている。天候インデックス保険の販売は上々の滑り出しをみせている。今後アジアの他地域への展開も検討中だ。

いずれの例でも、干ばつ被害や病気・事故などで農業収入が断たれた場合の生活基盤を支える手段を提供することは、農民が困窮状態に陥ることを未然に防ぐための重要な予防手段になっている。

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3.イノベーションとしてのCSRと教育
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CSRは外部規制でも押し付けられた責任でもなく、企業がより社会にとって必要な存在になるために企業自らが選択する経営戦略である。それはステークホルダーの期待に応えることを通じて、責任あるビジネスの主体へと自らを変革するひとつのイノベーションにほかならない。そしてイノベーションはいつもその担い手は社員である。したがって、損保ジャパンではこのCSR推進のための社員教育にずっと力を入れてきた。

これは、持続可能な社会を構築する主役は人であり、自ら考え他者と協働しつつ、進んで課題解決に向けて行動できる「人」を育む教育こそが重要だと考えるからでもある。この考え方は、国連が提唱するESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)という概念と軌を一にする。一般的に教育というと学校教育を想起しがちであるが、むしろESDの場合、市民だけでなく政策立案者や最前線のビジネスを担う人々こそを教育の中心に据えるべきであろう。当社ではそのような観点から、社員のCSRリテラシーを高めるための教育を、全社員向けの教育と、特に商品開発など中核業務を担う社員向けの教育の2つを軸として実施している。

教育の徹底には時間がかかる。また坂道を登る自転車のように、漕ぐのをやめればすぐ後退してしまう。逆に、浸透したら一番その成果に手ごたえのあるのも教育である。戦略的な、イノベーションとしてのCSRの成否は教育にかかっている。CSRに命を与えるのは教育である。

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