宿泊代の一部を寄付、ホテルで働く「誇り」に

「コンフォートホテル」を展開するチョイスホテルズジャパン(東京・中央)は5月17日、総額450万円をNPO3団体に寄付した。同ホテルは2016年10月から「Choice Guest Club(チョイスゲストクラブ)」会員約10万人の宿泊代のうち、0.5%を社会貢献団体に寄付する制度を導入している。競争が激化するホテル業界において、大がかりな社会貢献プログラムを導入した背景には、何があったのか。(瀬戸 義章)

5月17日に開いた寄付金授与式で。村木雄哉社長(右)自ら現地に足を運んだ

コンフォートホテルは、世界最大級のエコノミーブランドホテルで、チョイスホテルズジャパンは日本パートナーである。北海道から沖縄まで、展開しているホテルが主に出張や観光で利用されている。

寄付プログラムの導入は、3年以上前からマーケティング活動強化のために準備されてきた会員制度構築の一環だ。当初は全く別のプランが進んでいたという。

「キャッシュバックを中心にしたプランを1年以上かけて固めて、役員会の決裁もおりていたのですが、ある日、社長の村木にこう言われたのです。『君たちが心からやりたがっているように見えない』。はっとしました」

こう話すのは、同社の大塚さやかシニアダイレクターだ。そこで、会員制度をゼロから見直し、やりたいことを心の中から探した時、見つけたのは、「ホテル業の意義」だった。

「東日本大震災が起きた時、私は仙台で働いていました。避難してきた方々のためにロビーにありったけの毛布を出して、ぐちゃぐちゃになった部屋を泊まれるように何とか整えて、必死に走り回りました。その時、ホテルが『命を預かる場所』であることと、いつも営業できているのはその地域に支えられているからだということを実感したのです」(大塚氏)

こうして会員制度「ChoiceGuest Club」にホテルへの宿泊が社会貢献につながる仕組みを用意した。

■旅で世界とまちを元気に

寄付先の選定に当たっては、まず自社の事業を見つめ直した。コンフォートホテルの役割は、出張先や観光地に向かう旅のサポートをすること。こうして考えていった先に、「旅で世界とまちを元気に。」というコンセプトを築いた。

木を使って、森を守る「木づかい運動」を進めるJUON NETWORK

さらに、ホテル業は環境・教育・雇用に対し社会的責任を持つと考え、認定NPO法人JUON(樹恩)NETWORK(東京・杉並)、認定NPO法人カタリバ(東京・杉並)、One Planet Café Zambiaの3団体を支援対象に選んだ。

林野庁によれば、日本の森林の4割はスギやヒノキを植えた人工林である。こうした人工林は、間伐や下草刈りをしなければ地面に光が差し込まず、植物が育たない。

JUON NETWORKは、秋田県から長崎県まで、全国16カ所で体験型ツアーを実施し、都市部と農山村の交流人口を増やすことに力を入れている。

カタリバは、宮城県と岩手県、熊本県でコラボ・スクールを展開

カタリバは東日本大震災や熊本地震で被災した子どもたちに、「居場所」を提供する。仮設住宅は狭く、勉強する場所が無い。いつまで続くか先の見えない生活に、子どもたちの心も不安定になる。

こうした課題に対して、廃校になった小学校などを借りて、友達の家で行う勉強会のように、気持ちを休める場所を用意している。宮城県女川町では約150人の小中学生がカタリバの運営するコラボ・スクールに通う。

廃棄されていたバナナの茎を使い、環境と貧困問題に取り組む

複雑に絡み合う環境問題と貧困問題に取り組むのが、One Planet Café Zambiaだ。アフリカ南部の国ザンビアのサウス・ルアングワで有機栽培されているバナナの茎から繊維を集め、福井県越前市の和紙メーカーが「バナナペーパー」を製造している。

ザンビアは平均寿命55歳という貧困国だが、村の若者22人を直接雇用し、40以上のバナナ農家から原料を仕入れることで、所得向上や教育につなげている。

「Choice Guest Club」会員を対象にアンケートを取ったところ、「3つの団体すべてを応援したい」という回答が約7割に上り、寄付金450万円は3分割で支払われることとなった。

■社員が現地に足を運ぶ

「寄付だけでなく、広島の森林保全ツアーに15人も参加するなど、取り組みに対する本気さを感じています」

JUON NETWORKの鹿住貴之事務局長は話す。チョイスホテルズジャパンは資金提供だけでなく、現地への視察も行う。5月初旬には宮城県女川町にあるカタリバのコラボ・スクール、5月末には、村木雄哉社長自らザンビアを訪問した。

競争の激しいホテル業界において、会員宿泊代の0.5%を寄付に回すことは小さな決断ではない。反対の意見も挙がった。しかし、現場のスタッフを巻き込み、スタディツアーを開催し、現地の課題を目の当たりにすることで、肯定的な意見が増えていった。

「従業員満足度調査で、『会社を誇りに思う』と備考欄に書いてくれる社員が増えてきました。『ホテル業の意義』を意識することで、サービスの向上にもつながっていくと思います」(大塚氏)

間伐材で作った「樹恩割り箸」をレストランで使ったり、子どもたち向けにホテル職業体験イベントを開催したり、バナナペーパーのノベルティを作るなど、大塚シニアダイレクターはコラボレーションへの期待に胸を弾ませた。

◆Choice Guest Club会員サービスの特徴

・無料の会員制度
・公式Webサイトが最安値
・ ロングステイサービス(最長21時間)
・ メルマガ割引(1泊1名あたり200円割引)
・ クーポン(会員登録で200円割引クーポンプレゼント)
・ ホテル制覇(5ホテル泊まるごとにプレゼント)
・社会貢献団体に寄付
※ ご宿泊代の0.5 % が応援ポイント「choice」として貯まります
※ 250choice貯まるごとに500円の

◆申し込み・詳細は ⇒ Choice Guest Club

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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