日本農業 常識と非常識の間 31
5月、こんなニュースが流れた。「種苗法の自家増殖『原則禁止』へ転換 海外流出食い止め法改正視野、例外も 農水省」
これは日本農業新聞に載った記事の題名だが、何を言っているのか、伝えたいのかよく分からない。ネットで調べても他の新聞で取り上げた形跡はない。農業者、特に有機農業や自然栽培をする生産者にとっては影響の大きい法律だ。

ひいては自給率や「食料安全保障」という視点からみても由々しき問題となる。つまり自家増殖「原則禁止」とは、自家採取や未登録の在来種の種が使えなくなる恐れがある。これに先立って4月には「種子法」が突如廃止されている。
立て続けの変化でなかなか理解できないのだが、一言でいえば、農業が「土」と「種」から離れていくということだ。
例えば植物工場は水耕栽培で「土」ではなく水に養分を溶かし込み育てる。太陽光ではなく人工照明による光合成を基本に生育時間を管理する。外界との接触を断ち、コンピューター管理で栽培する。
最近は採算も取れはじめ、工場跡などを改変し企業参入が加速し、より拡大していく。結果、農業は「土」から離れる。
もう一つ、逆に「土耕」という言葉がある。文字通り「土」で育てるということだ。とはいってもここにも工場生産的システム化の発想が広がっている。それを後押ししているのが政府の言う農業の「成長産業化」、「ビジネス化」を前提にした規模拡大、単一栽培路線だ。
つまり、IоTやAIを活用し、生産システムを大規模化、省力化することによって効率を上げる。必然的な流れだ。そしてその効率性は種にも要求される。
成長、品質が一定で作りやすい種、雑種一代のF1種子、遺伝子組換え種子にシフトしていく。「種」は生産者の手を離れ毎年企業から購入することになる。農業から「種」が切り離される。