仏デモ13週目に:「個人」「女性」「SNS」が起点

フランスの「黄色いベスト」デモは2018年11月以来、毎週土曜日に全国で繰り広げられ、2月9日13週目に突入した。参加者は数万~30万人規模で推移している。当初は「燃料価格値上げ反対」を掲げていたが、最近は政治的主張が強くなってきた。一連のデモの特徴的な起点は「個人」「女性」「SNS」だ。(パリ=羽生のり子)

■ネット署名で火が付き、120万筆に
一連のデモのきっかけは、一人の女性の行動だった。2018年5月、パリ近郊に住む仏カリブ海外県出身の女性プリシラ・リュドスキさん(33)が、ガソリン・軽油価格が急に上がり始めたことに疑問を持ち、値上げに反対するネット署名を始めた。数日で20万筆が集まり、2019年2月3日の時点では120万筆に達した。

燃料価格反対の署名運動を始めたプリシラ・リュドスキ氏。

このリュドスキさんに、同じパリ近郊に住むトラックの運転手、エリック・ドリュエ氏(33)が昨年10月、運動にしようと持ちかけたのが、「黄色いベスト」運動の始まりだった。二人に面識はなかったが、SNSのフェイスブックでつながった。

「黄色いベスト」は、フランスで事故など緊急時用に自動車に備えることが義務付けられている。ガソリン価格の急騰や燃料税の増税に反対する低所得労働者の象徴として、デモ参加者が黄色いベストを着るようになった。

リュドスキさんは大手銀行で国際金融を担当していたが、退社してオーガニックコスメの通販に転じた。仏国内メディアからは、リュドスキさんはエコロジーと親和性が高いとみられている。

■政党色よりも、個人色が強いデモ
デモの呼び掛けはフェイスブックで全国的に広がった。参加者の多くが、一度もデモをしたことがない人たちだった。

フランスでは日本と同様、デモは労働組合やNGO、政党などが組織し、事前に警察に届け出た道順で行進する。ところが、「黄色いベスト」は、デモのルールを知らない人たちがリーダー不在の中で届け出もせず行った、ゲリラ的なデモだった。その意味で、2015~16年に日本の首相官邸前で続いたデモに似ている。

核となる組織がないので、どんな傾向の人が参加しているのか、外部からは全く分からなかった。そこでメディアは、フェイスブックの内容から傾向を推測した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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