「地球が最優先」 名古屋で訴え

COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が行われている名古屋国際会議場の内外で、NGOが中心となって開発行為から生態系を守るよう各国代表などに働きかけている。生物資源の利益配分ばかりが争点化されがちな今回の会議で、「地球が最優先」というシンプルな訴えが存在感を見せる。

10月28日正午には、市民らでつくる「上関の海を守りたいCOP10アクション」を中心に約140人が、会議場南側正面のフェンス前で自然保護を呼びかけて「人間の輪」を作った。

「Earth first! 地球を優先! happy link」と名付けられたこの行動は、中国電力が実施をもくろむ山口県上関町の上関原子力発電所工事や、名古屋市内で最後に残された里山と言われる天白区の平針里山で25日から始まった伐採作業など、COP10会期中にもかかわらず強行される開発行為と自然破壊について国内外にアピールするのが狙い。

参加者らは手をつなぎ、「アース・ファースト(地球が最優先)!」と声を上げた。

またこれに先立つ19日には、市民グループ「上関・広島リンク」の呼びかけで、上関原発問題をCOP10の重要問題として取り上げるよう求める共同声明が、国内270、海外41団体の共同声明として発表された。

そしてこれを受ける形で、22日午後の本会議ではNGOや市民団体からの声明文として、上関原発の話題が取り上げられた。声明文は「COP10が開催するちょうど1日前に、西日本の沿岸、上関で原子力発電施設の開発が始まりました。これによって、地域住民の生活や海洋環境に破壊的な影響をもたらすことでしょう」として、工事強行に対する深刻な懸念を表明している。

東京・高尾山で圏央道トンネル工事の中止を求めるNGO「エコアクション虔十の会」の坂田昌子代表は、NGOらによるこうした一連の活動を担う一人だ。

「会議場の内外でロビーイングを展開している。今回のCOP10はこれまでになくNGOのアクションが低調だと言われているが、上関原発を巡っては多くの団体や個人が力を発揮した」

持続可能な社会を呼びかける運動「7 generations walk」の呼びかけ人で僧侶の山田俊尚氏が、工事強行に対して抗議のハンガーストライキを始めると、会場内で毎日発行される英字新聞「ECO」が取り上げた。人権問題に敏感な欧州からの参加者がこれに反応し、さらに上関原発を取り上げた映画「ミツバチの羽音と地球の回転」の鎌仲ひとみ監督も会議場に乗り込んでアピールを行ったという。

これまでの経過を振り返って坂田代表は「本会議の場で上関原発問題が取り上げられたのは、生物多様性を守るうえで大きな成果だ」と語った。(オルタナ編集部=斉藤円華)2010年10月28日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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