発達障がい者100人の声集め、ノートを開発

大栗紙工(大阪市)は1月15日、発達障がい者約100人の声を集めて開発した「uni note(ユニ・ノート)」を発売する。一般社団法人UnBalance(大阪市)の協力のもと、「中紙の色」や「罫線」を工夫し、感覚が過敏だったり、集中力が途切れやすかったりする発達障がい者をはじめ「誰もが使いやすいノート」を目指した。まずは限定4000冊を試験販売する。(オルタナ編集部=中山涼太)

検討風景1

発達障がいと診断された人の中には「視覚過敏」と呼ばれる特性を持ち、特定の光や色によって受ける視覚のストレスが大きく、日常生活に支障をきたしてしまうことがあるという。知的能力に問題がなくても、「ノート」を開くだけでも辛いと言う人もおり、学習に支障が出るケースもある。

uni noteは、発達障がい者約100人にアンケートをするなどして、彼らの要望を丁寧に吸い上げ、半年間の試行錯誤を経て完成した。アンケートでは、「行ごと、色違い」「行の濃淡を付けて欲しい」「罫線と罫線の間を太くして欲しい」「太い幅のノート」といった意見が集まった。

検討風景2

uni noteは、表紙や中頁から、余計なデザインや情報を省き、反射によるちらつき、まぶしさをおさえた国産色上質紙を使用。罫線の太さや行ごとに色を変え、各段落がハッキリ識別できるようにした。

臨床心理士・社会福祉士の小山美紗貴氏は「学校教育では『ノートに書く』ことの役割は大きく、『練習する』『思考を整理する』『備忘録とする』など、知的活動には欠かせない。しかし、『ノートに書く』作業は、全ての人が容易にできることではない」とし、「このノートは、『目が疲れにくい』『行間が分かりやすい』など、新奇な工夫が施されたものになっていて、自由な発想で使うことができる」と評価した。

「uni note・レモン」「uni note・ラベンダー」

UnBalanceの元村祐子代表は、「当事者の声を『形』にして頂き、感動している。発達障がい者の中には、真っ白い紙や、薄くて細い線を認識するのが苦手な人もいる。でも、このノートなら我慢しなくてすむ。そうした人たちが使いやすいノートは、誰にとっても使いやすいノートだと思う。多くの方々に手に取っていただき、使っていただきたい」とコメントしている。

大栗紙工の大栗康英社長は「いわゆる『下請け』で、オリジナル製品の開発・販売にも取り組みたいという思いが強くなってきたとき、UnBalanceに出合った。ワクワクとした気持ちを忘れることなく、今まで培ってきた技術を総動員し、少しでも発達障がい者の方々の役に立てるように心を込めて作った。いただいた意見を細部にまでこだわって形に仕上げた自信作」と語った。

uni noteはラベンダーとレモンの二種類。1冊280円(税込)で大栗紙工のオンラインショップで販売される。

1月15日の発売を予定しておりましたが、諸般の事情で発売を延期しております。(2020年1月15日時点)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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