1月30日に6人目の新型肺炎患者が出たフランスでは、病気の発生地が中国であることから、人種差別を受けるアジア系住民が急増している。被害者は中国人だけでなく、ベトナムなど他のアジア系にも広がった。年齢も学童から大人までと幅広い。普段出てこないアジア系差別が表面化した背景には、フランス人の極右化があるといえそうだ。(パリ=編集委員 羽生のり子)

フランスでアジア人への差別的な報道が一挙に増えたのは1月末日からだ。

フランス地方紙が「差別的な見出し」で謝罪

「差別的な見出し」として謝罪に追い込まれたクリエ・ピカール紙の1月26日付けトップ記事

北部ピカルディー地方の日刊紙「クリエ・ピカール」は1月26日、一面のトップ記事にマスクをしたアジア人女性と「中国のコロナウィルス 黄色い警報」という大見出しを載せた。社説でも「黄禍?」との見出しを付けた。

当然、多くの市民や自治体の市会議員などがツィッターで批判したため、同日午後、謝罪に追い込まれた。

翌日、人種差別の広がりに危機感を持った女性が匿名で「私はウイルスではない」というハッシュタグを作った。この投稿によると、「中国人」という言葉は、中国だけでなく他のアジアの人々も十把一絡げにしているといい、ウィルスを人種と結び付けていることを危険視している。

地方紙「パリジャン」は、パリ近郊のセーヌ・サンドニ県の学校で、多くのアジア系の子どもが周囲から無視されたり、心ない言葉を浴びせられるなどのいじめに遭っていると報道した。

大人でも、相手が握手をしてくれなかったり、交通機関や道で人から避けられたりという目に遭っている。筆者も、地下鉄のエレベーターに乗り込んだ時、先に乗っていた小学生が、自分が入った途端に出ていく姿を目の当たりにした。

「パリジャン」によると、中国系の高校生は、バスに乗り合わせた人が「あの中国人からウイルスを移される。国に帰ればいいのに」と真顔で話すのを耳にしたという。「アジア人はおとなしいから反論しない」というステレオタイプのイメージも、差別的言動を増長している。

人種差別の背景に極右思想の浸透

人々がこれほどあからさまに差別をするのは、極右思想が普通の人々に浸透しつつあるからではないだろうか。90年代は極右政党を支持するとはっきりいう人は少なかった。そう表明することは恥ずかしいと思われていた。

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