味の素はこのほど発表した中期経営計画のなかで、2030年の目指す姿として「アミノ酸の働きで、世界の健康寿命延伸に貢献する」と宣言した。西井孝明社長は「食と健康の課題解決を新たな成長ドライバーに加え、そのためにあらゆる経営資源を集中する」と力を込めた。(オルタナ総研コンサルタント=室井孝之)

「食と健康の課題」の例として、「減塩による高血圧等の慢性疾患の予防」を挙げた。同社は、アミノ酸のうま味によりおいしく減塩できる「岩手県モデル」を国内外に横展開する方針だ。
岩手県では、毎月28日を「いわて減塩・適塩の日」とし、この日は岩手県内のスーパーマーケットで減塩商品を紹介するキャンペーンが行われたり、県の施設でのぼり旗を立て、減塩の必要性を伝える取り組みを展開。味の素社は行政や流通、メディアと連携してキャンペーンを促進した。
その結果、岩手県の一日当たりの塩分摂取量は、2012年男性12.9g(全国1位)、女性11.1g(全国1位)から、2016年には男性10.7g(全国21位)、女性9.3g(全国18位)へ改善した。国内では、2019年現在39都道府県まで協働が拡大している。
味の素は、うま味物質・MSG(グルタミン酸ナトリウム)の安全性や、風味を向上させ塩分摂取量を削減させる効果についての理解促進活動を続けている。2018年9月には米ニューヨークでWorld Umami Forumを開催した。
中期計画のなかでは、2019年9月の世界的調査会社Mintelのレポートで、「MSGが安全でうま味の素であることを消費者が理解するにつれ食品やレストランでのトレンドが変わるだろう」と評価されたことも紹介されている。