■コロナ後の町づくりに、「タクティカル・アーバニズム」を生かす
4月中旬に、運輸省は「イノベーティング・ストリーツ・フォー・ピープル・パイロット・ファンド」と呼ばれる助成金制度を発表した。700万NZドル(約4億6000万円)以上を用意しており、地方自治体が行う、人に優しい町や都市づくりのためのプロジェクトにかかる費用の90%を助成する。
通勤にも、買い物にも便利な活気ある居住空間は、住人にとって理想的といえる。それを、人々の健康と地球環境に配慮した方法で実現しようとするプロジェクトに手を貸すというわけだ。
同助成金制度を通して、政府は、「タクティカル・アーバニズム」を通して、町づくりを行おうという地方自治体を評価・援助している。「タクティカル・アーバニズム」とは、短期で低コストで行うことができる介入方法や政策を用いて、地域社会にとっての価値を実証し、それに基づき、長期的な変化を促すことだ。
臨時の自転車レーンを設けるのも、「タクティカル・アーバニズム」の一例であり、助成金制度の対象となる。新型コロナウイルス禍での隔離生活を経験した際に、公共交通機関より、2mのソーシャルディスタンスがとりやすい自転車での移動に、人々は興味を持った。そこで、自転車レーンを一時的に取り入れてみて、その良さ・利点を実際体験してもらい、同レーンを永続的に使用する方向に導いていこうという計画だ。
米国の『フォーブス』誌には、新型コロナウイルス禍で、近い将来のために、「タクティカル・アーバニズム」を政策に取り込んでいくことを狙いとし、政府が支援金をあてる例は世界では初めてと取り上げられている。
世界にはニュージーランドと同様の趣旨で、臨時の自転車レーンを設けている都市がほかにもある。ドイツ・ベルリン、コロンビア・ボゴタ、メキシコ・メキシコシティーなどだ。