コロナで増える密猟、日本人ガイドが危機訴え

新型コロナウイルスの感染拡大はアフリカの野生生物にも思わぬ影響をおよぼしている。密猟が横行する南アフリカでは、環境保護団体の資金が激減し、自然保護区内で人の移動が減ったことで、ロックダウン期間中、ブッシュミート(食用のための野生生物)をターゲットにした密猟の事件数が増えた。そうしたなか、南アフリカにいる唯一の日本人サファリガイド・太田ゆかさん(25)は「バーチャルサファリ」を立ち上げ、生態系保全への関心を高めようと奮闘する。(オルタナ編集部・松田ゆきの)

太田さんは、2015年に南アフリカ共和国へ移住後、アフリカ最大のガイド訓練学校を卒業してサファリガイドの国家資格を取得した。南アフリカにいる唯一の日本人サファリガイドとしてヨハネスブルグから車で5時間、四国と同じ面積ほどのクルーガー国立公園で環境保護プロジェクトに参加していた。

環境保護プロジェクトの専属サファリガイドとして、国立公園をボランティア参加者や旅行者に案内するほか、国立公園でのパトロールや、傷ついた野生生物を保護するのが主な業務だ。クルーガー国立公園は動物保護区ではあるものの、密猟者は後を絶たない。

クルーガー国立公園でサファリガイドをする太田ゆかさん

太田さんは数年前、後ろ足が罠にかかり、歩くのもままならず苦しむアフリカゾウを発見した。ゾウの傷はかなり深く、治療ができないと判断し、その場で安楽死をさせることになった。針金で作られた罠にかかった草食動物が死んでいる現場にも遭遇した。

「密猟の罠にかかってしまった動物など、私たち人間のせいで苦しむ動物に遭遇すると、悲しく、とても申し訳ない気持ちになります。まだ動物が生きていた場合は、罠の除去をするために麻酔銃で打ったり、捕獲をしたり、野生動物にとってもストレスのかかる対処をしなくてはなりません。安楽死という選択肢しか残されていない場合もあります」。太田さんは胸の内を明かす。

なぜこうした密猟が横行するのか。東南アジア、特にベトナムでは、象牙やサイの牙で作られた装飾が富裕層の社会的ステータスのシンボルであり、闇市場では高い価格で売買が行われている。

日本では印鑑の素材として象牙の人気が高く、中国が2017年12月に象牙の販売を禁止した後、日本は世界最大の象牙の取引市場となった。象牙の国際取引はワシントン条約によって禁止されているものの、日本国内の流通は合法であるため、象牙の密猟・密輸に間接的にかかわっているとして国際社会から批判されている。

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