【連載】オルタナティブな空間

新型コロナウイルス感染拡大に伴い緊急事態宣言が出され、皆がステイホームな日々を過ごしている頃、R不動産グループで一緒に仕事をしている建築家の宮部浩幸さんが、これからの街・住宅・オフィスのあり方についてface bookに投稿したのをきっかけに、近畿大学の宮部浩幸研究室、東北芸術工科大学の馬場正尊研究室、Open Aで共同のオンラインゼミが立ち上がった。

オノタツヤ氏によって具体的なビジュアルになったNewNormalの風景。オノタツヤ氏は東北芸術工科大学出身、 R不動産グループのSPEACで設計業務に携わった後に独 立。都市の新たな風景をイメージさせるイラストレーショ ン等を描く。プロジェクトの詳細は、東京R不動産/公共R不動産/REWORKの各サイトで

ちょっと前まで、東京と大阪と山形の大学で共同ゼミをやろうとしたら、かなり大げさな準備と時間、そして移動コストが必要だっただろう。しかし、今回はこの企画が持ち上がって3日後には、「試しにやってみようか」ということでオンラインのアカウントが設定され、学生とOpen Aスタッフに共有された。

三つの都市をつなぐのは簡単だった。いや実際には、京都や仙台に住んでいる学生も含め、20ヵ所以上も同時につないだゼミだったわけだが。

社会人と大学生、関西と東北、それらがあっという間にシャッフルされてフラットになる。なんだか学ぶことや働くことの枠組みが一気に変わってしまったのかもしれないと感じた瞬間だった。

方言が飛び交うディスカッション、都会と地方では発想も違う。たとえば大阪の学生は都市のスキマを見つけて、そこを小さな居場所にすることを思いつく。

山形の学生は自然の中に飛び出していくようなワークスペースを提案する。暮らす環境が違えば、おのずと想像する風景も違うのだ。そのギャップもおもしろかった。

R不動産の着想のベースには近和次郎の「考現学」という学問がある。

1923年に起きた関東大震災の後、当時、早稲田大学建築学科教授だった今和次郎が、破壊された都市からいろんな材料を拾ってきて、仮の住み家や店を工作的に組み立ててゆく人々の想像力に感動し、それを記録したことに始まる。

その描写やスケッチはとてもユーモラスで、大変な状況の中でも、人々は新たな生活に向けて空間をつくっていけることを伝えている。いや、その状況下だからこそ、今までにない工夫やデザインが生まれるのかもしれない。R不動産は物件を考現学的な視点で語った不動産仲介サイトだ。

それから100年。今回の災害は物理的に都市を破壊するものではなく、目に見えないところで静かにやってくるものだった。ステルス性の高いこの災害は、ある意味で現在を象徴しているようにも思える。

そんな中でも人々はその状況を克服すべく、いや、もしかすると楽しさやユーモアに変換しながら、やはり新たな空間を創造しようとする。この共同ゼミは、見えない災害の時代の考現学であるのかもしれない。