コロナ禍は変革への「最後の機会」

alternative eye(61)編集長・森 摂

今回の新型コロナ禍は、私たちの社会や生活を一変させました。企業も、顧客や社員、そして社会との関係性が大きく変わりつつあります。今号第一特集では、新型コロナによって格差が拡大し、社会の沸点が下がることを予測しました。

ミレニアム世代(1980年生まれ以降)、Z世代(1995年生まれ以降)、それに続くC(コロナ)世代など若い世代は、その上の世代より遥かに社会課題に対する関心が高いのです。ミレニアム世代は世界人口77億人のうちの32%、約25億人(2019年)を占め、世代別で最大勢力となりました。

ミレニアル世代のうち最年長は今年40歳になり、企業でも管理職になる年齢を迎えました。ミレニアム世代以下の若い人たちは顧客として、従業員として、社会の構成員として、より重要な存在になったのです。企業はこれまで以上に「社会対応力」への配慮が必要な時代を迎えました。

今号第一特集では、識者からの寄稿を掲載させて頂きました。このうち竹村眞一さんは「コロナ禍の本質はSDGsである」と強調されました。田坂広志さんは、パンデミックなどの危機ではそれまでの経済モードを速やかに安全モードに切り替えられる「デュアルモード社会」の構築を訴えました。

平川克美さんは、欧州各国がコロナ支援で大幅な財政出動に踏み切ったことを挙げ、今後、民主主義を守りながら福祉と再配分を進める「社会民主主義」の再浮上を予測しました。『地球に住めなくなる日』の著者であるD・W・ウェルズさんも「各国政府が新型コロナ対策で前例がないほど気前が良い政策をしたことは、各国の気候変動対策においても期待できる」と話しました。

ネスレ日本の前CEOである高岡浩三さんは「消費者そのものがサステナビリティをいかに貢献するかを考え、生活行動をも変えていく時代が来る」と予測しました。高村ゆかりさんは、脱炭素と経済復興を同軸で進める「グリーンリカバリー」が重要だとして、官民で分散型社会の実現を提唱しました。

OECDの東京センター長の村上由美子さんは、今回の新型コロナ対策でニュージーランドや台湾の女性トップの活躍を挙げ、「脱『おじさん』が競争優位であり、企業にとってもダイバーシティを強化することが競争力を高める」と改めて指摘しました。

ハリウッド化粧品グループの牛山大輔さんは「コロナのような経済危機こそ、パーパス(存在意義)が重要」と強調しました。今回のコロナ危機はその重要性を浮き彫りにした」と指摘しました。

英国のESGエンゲージメント専門家である鈴木祥さんも「ここ数年、欧米を中心に企業の存在意義(パーパス)を問い直す動きがありましたが、今回のコロナ危機はその重要性を浮き彫りにした」と指摘しました。

パーパスは2008年のリーマンショックをきっかけに米国や欧州企業に広がりましたが、大きな経済危機ほど、自社の存在意義を見つめ直す好機だとも言えます。田坂広志さんは寄稿で「本稿で述べたいことは、ただ一つ。危機の時こそ、変革の絶好機」ーーと締めくくりました。

まさにその通りです。日本が人口減少や経済停滞を止められないまま、このまま右肩下がりの道に入れるか。それともさまざまな経済・社会改革を通じて、競争力を取り戻せるか。私たちはまさに岐路にいるのです。

雑誌オルタナ61号(2020年6月30日発売)から転載

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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