角川ドワンゴのネット高校・N高等学校から、17歳の起業家が誕生した。UVカット専門のファッションブランド「HAYATO KURATA」を立ち上げた倉田速音(くらたはやと)さんだ。長時間紫外線に当たることができない尋常性白斑を患っており、好きなファッションの世界で「同じ悩みを持つ人が前向きに生きるきっかけを作りたい」と意気込む。2月1日からクラウドファンディングで資金調達を開始した。(寺町幸枝)

N高での出会いが発信のきっかけに

倉田さんは小学校5年生の時に「尋常性白斑」という肌から色素が抜け落ちて白くなる病気を発症した。全国に100万人いると言われるこの慢性的な皮膚疾患により、倉田さんは長時間紫外線に当たると炎症を起こすようになったという。「目に見えるこの病気がコンプレックスとなり、病気について人前で話すことすらできなかった」。
しかし、N高等学校に入学して出会った友人や先生が、倉田さんの白斑という病気を前向きに捉えてくれたことで、今まで口に出すことさえ躊躇していた持病について、外に発信することができるようになったという。
そして、「N高起業部」へ入部した。これは同高校が起業家を目指すことでイノベーティブな考え方を学び、日本や世界を支える人材育成をしたいと行なっている課外活動である。同部2期生として、自身がかねてから興味を持っていた「ファッション」と、尋常性白斑の問題解決の両方を兼ね備えたファッションブランド「HAYATO KURATA」の立ち上げることになった。
生きづらさに取り組む起業家を目指して
ブランド立ち上げにあたり、自分と同様に白斑という持病を患う患者と対話する中で、多くの共感を得ると同時に彼らの悩みを改めて知った。「同じ病気に苦しむ人たちの助けになりたいと強く思った」と倉田さんは話す。
倉田さんが手掛ける服はUVカット機能を備えた生地を用いて作られており、肌が隠れる面積が多いのが特徴だ。職人が手作業で1点ずつ生地を縛り染め上げる「タイダイ染め」を採用している。その理由は、1点1点異なるデザインになることで「人間の持つ個性の象徴にしたい」という思いを込めたという。
「病気による<生きづらさ>に取り組む第一人者になりたい」と話す倉田さん。当事者自ら病気に対する認知を広げ、同時に社会課題の解決に向けて走り出した挑戦は、まだ始まったばかりだ。