「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に認定された吉野山(奈良県)。約3万本のヤマザクラが群生する、日本を代表する桜の名所だ。だが、この吉野桜をはじめ全国の桜が、老齢化や病害虫によって危機的な状況を迎えている。こうした桜を保全しようと、動き出す企業が現れた。(オルタナ編集部=吉田広子、池田真隆、山口 勉)
桜は大きく分けて、ヤマザクラなどの野生種と、ソメイヨシノに代表される栽培品種がある。
日本で最も広く栽培されているソメイヨシノは、同じ遺伝子を持つクローンだ。だからこそ、開花するタイミングがそろう一方で、病気や環境の変化に弱く、一斉に寿命を迎えていく。日本古来のヤマザクラの寿命は約80年~100年と言われているが、ソメイヨシノの寿命は60年と短い。病気にかかったり、老朽化したりした桜は、倒木の危険もある。
ソメイヨシノが罹りやすい「てんぐ巣病」はカビの一種によって引き起こされる伝承病で、近年、全国的に広がっている。