菅首相が本部長を務めるSDGs推進本部が主催するジャパンSDGsアワードで、「SDGsパートナーシップ賞」を受賞した中小企業がある。天然のアルギン酸を扱うキミカ(東京・中央)だ。同アワードでは、主に大企業が受賞しており、中小企業が選ばれることは珍しい。どのような取り組みをしているのか。(オルタナS編集長=池田 真隆)

キミカの笠原文善社長

キミカが取り扱うアルギン酸とは、コンブやワカメなどの海藻に含まれる多糖類。食感を改良する効果があるので、パンなどの加工食品に利用されたり、医薬品や化粧品、 繊維、 鉄鋼、製紙などにも使われている。

同社では、1940年代からアルギン酸の工業的生産に成功させ、それ以来国内シェアトップのメーカーとして成長を続ける。

きっかけは、創業者の笠原文雄が房総半島の浜辺に打ち上げられた大量の海藻を目にしたことだ。文雄は戦時中、困窮した日本において、この海藻こそが国家の復興に役立つと考た。文雄はまず、海藻からヨウ素やカリウムを抽出することを考えたが、研究を重ねていくうちに天然の食物繊維「アルギン酸」に目を付ける。ただ、その当時はアルギン酸に関する文献や資料はほとんどなく、独学で続けたという。

海藻を「天然資源」ととらえた、この創業者の精神はいまの同社にも引き継がれている。1980年代からチリで海藻の収集を始めたが、同社が社会的企業とされるゆえんは、その収集方法にある。

一般的には、大型船で沖に出て海藻を刈り取るのだが、同社では、浜辺に打ちあがった漂着海藻を一つひとつ漁民たちが手作業で収集している。アタカマ砂漠の乾燥帯を利用して、電力も熱源も消費することなく、収集した海藻を乾燥・保管させている独自の製造方法でエネルギー消費を最大限抑えた。

アルギンを抽出したあとの海藻残渣は豊富なミネラルを含む。良質な土壌改良材となるので、地元の農家に無償で提供し、収穫量の向上に貢献している。

海藻の乱獲防止とチリ漁民の生活水準の向上にも一役買っている。長年にわたり現地の漁民と共同で海藻乱獲を防ぐための活動に取り組み、チリ沿岸での海藻養殖を支援してきた。

同社の二代目社長を務める笠原文善氏は、「中小企業にとってのサステナビリティは、会社の存続に直結する。社会課題を経営課題ととらえてないと、社会に存続できない」と述べる。