生理用品が購入できず代替品などを使わざるをえない状況、いわゆる「生理の貧困」に社会の注目が集まっている。日本でも、自治体や学校単位での無償配布など動きも見られるようになってきた。しかし「生理の貧困」はコロナ禍で顕在化するまで、隠れた貧困といわれてきていた。そこには、生理をタブー視する社会意識が関係している。本稿では生理に対する意識の変遷を、従来の生理のイメージを覆すことにチャレンジしたコミュニケーション事例とともに考察していく。(伊藤 恵・サステナビリティ・プランナー)

生理=穢れという概念の歴史

日本で記録に残っている最初の生理用品は、平安時代の医学書『医心方』の中に記述されている「月帯(けがれのぬの)」という布製品である。仏教や神道の教えから、月経中は「穢れの身」であるため参拝を慎むなど、月経不浄視に基づくさまざまな慣習が受け継がれてきた。

明治時代に入り、このような慣習は法令で公には廃止されたが、いまなお人々の間には生理は穢れであるという意識が根強く残っている。初潮を迎えると赤飯でお祝いされるのを最後に、生理は隠すべきものとして女性自身の中にも深く意識されてきた。

そのため生理に関する正しいケアの啓蒙、生理用品の開発なども進まず、女性達は悩みをオープンにできないままひとりで抱え込む時代が長らく続いていく。ようやく日本で本格的な生理用ナプキンが発売されたのは1961年。先行してナプキンが普及していたアメリカより実に40年も後の事だった。

このような生理を穢れとする考え方は、日本に限らず世界中にあり、生理期間中の女性を隔離する、同じ食器を使わないなどの風習がいまだに残っている地域もある。

太古の人々が抱いた血への恐怖などの感情が穢れの概念となり、今でも根強く残っているとされているが、生理に対する閉塞的な考え方は、女性の尊厳、自由な社会活動への制限など、さまざまな側面から女性が自分らしく生きることへの大きな障壁になっているといえる。その壁を壊すべく、近年世界では生理の概念を変えていこうとするコミュニケーションがおこなわれている。

生理はもうタブーじゃない「#bloodnormalキャンペーン」

2017年にイギリスの生理用品メーカーが展開した#bloodnormal(=出血なんて普通)キャンペーンは、生理は忌み嫌うものではなく、自然なものだとポジティブに捉えることを訴えた。

通常青い液体を使う生理用品のCM で、実際の血を思わせる赤い液体を使い「女性は青い液体を流さず、赤い血を流す。生理は自然なこと」と訴求。CM以外にもフランスのランジェリーブランドとコラボして、商品開発をおこなうなど、多角的なキャンペーンを展開。大きなムーブメントを巻き起こし、世界最大の広告賞であるカンヌライオンズの男女同権を訴えるグラス部門でグランプリも受賞した。

生理のリアルを正面から描いた韓国のCM

いままで生理用品のCMといえば「あの日だって、爽やか!」「いつだって、わたしらしくハッピー!」などというメッセージとともに、生理の日でも快適でポジティブに過ごす「キラキラした」女性を描いてきた。

しかし、この描写は多くの生理中の女性とかけ離れている。眠気や腹痛などの身体的不調に、イライラや不安などの精神的な不調。リアルな女性達は毎月生理に悩まされている。そんな実情を真正面から描いて話題になったのが、2018年に公開された韓国の生理用品のCM。

「その日も立ち止まらない」「その日も私たちは輝かなきゃいけないから」既存のCMでよく見るフレーズとともに映し出されるのは憂鬱そうな女性達。彼女たちは「痛くてイライラする」「不安だ」「絶対に爽快じゃない」「それが生理だ」と次々に訴えていく。

ラストのメッセージは「何もしなくても大丈夫。それもまたあなたの選択」。生理の苦しみやストレスに寄りそったこのCMに対して韓国では賞賛の声が集まり、日本でも、SNS上で日本語訳がついた動画が拡散。16万以上のいいね!がつき話題となった。

近年大きく変わりつつある生理への意識。タブー視して覆い隠すのではなく、オープンに語られるようになることは、「生理の貧困」の解決はもちろん、女性がより自分らしく生きられる社会をつくるために必要不可欠な要素ではないだろうか。次回は、昨今の日本の状況と今後について考察していく。