レッドリストの事件記者

 ところが、受付で規制していて入れてくれない。驚いたことに、既に他の新聞社が3社も来ていた。これはマズイ。電話で福さんに報告すると、悪い奴ほどよく眠るんだ、何とかしろ、俺も今行く、と怒鳴りまくる。
 福キャップがやってきたころには報道陣は20人に膨れ上がっていた。
「面会時間は終了しました。玄関を閉めるので報道の皆さんは退出してください」
 夜になって警備員が記者を追い出しにかかった。仕方なくゾロゾロと玄関に向かおうとすると、福さんからどつかれた。おいおい、ここで帰るアホがいるか。トイレだ、トイレ。
「えっ、トイレ?」
「7階に上がってトイレに隠れよう」
 訳も分からず、私は福さんと男子トイレの個室に立て籠った。外側に「故障中。使用禁止」の紙を張る。福さん、いつの間に。
 有里ちゃんがバケツや掃除ブラシを担いできて男子トイレの掃除道具の部屋にぶち込んだ。
「これで女子トイレの空いた掃除道具部屋に籠れるわ」

挿絵=井上文香
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希代 準郎

きだい・じゅんろう 作家。日常に潜む闇と、そこに展開する不安と共感の異境の世界を独自の文体で表現しているショートショートの新たな担い手。この短編小説の連載では、現代の様々な社会的課題に着目、そこにかかわる群像を通して生きる意味、生と死を考える。

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