ナイキ(米オレゴン州)は2001年から環境や社会への影響に関する報告をまとめた「インパクトレポート」を発行している。過去に委託先の児童労働問題を指摘され、不買運動にも発展した経験を持つ同社だが、現在はどうなのだろうか。最新の「インパクトレポート」をじっくり読んでみた。(山口 勉)

インパクトレポートについて語るジョン・ドナホー社長兼CEO

1996年、同社の業務委託先で子どもがサッカーボールを縫う姿が報じられ、児童労働問題について世界が認識するきっかけとなった。この報道によって、世界各地で同社製品の不買運動が起きたことはよく知られている。だが同社はその後大きく舵を切ったようだ。

インパクトレポートとは

ナイキは脱炭素に向けた取り組みや人種差別、労働環境の改善などに向け、5年ごとに達成目標を定めて取り組みを行っている。「インパクトレポート2020」は英語版が3月10日、日本語版が4月16日にリリースされた(日本語版はエグゼクティブサマリーのみ)。

インパクトレポート2020では、2015年に設定したナイキの2020年目標に対する評価を行いつつ、2025年に向けて新しい目標を設定した。2020年目標では19項目、2025年目標では29項目を挙げた。目標の主軸は持続可能性と多様性への取り組みだ。

ジョン・ドナホー社長兼CEOは「2020年はこれまで人類が経験したことがない年になった」としつつ、その中でも二酸化炭素排出削減に向けた取り組みや環境問題に対して次の成果があったことを挙げた。

• 米国とカナダに自社所有や運営する施設では、100%再生可能エネルギーを達成した。世界的には2020年度に使用した動力源の48%を再生可能エネルギー化した。

• 素材の染色と仕上げのサプライヤーでは、淡水の利用を30%削減し、2020会計年度の目標を大きく超えて達成した。

• シューズの1次サプライヤーは、生産過程の廃棄物の99.9%の埋め立てられることなく転用され、2015年度以降、4700万kgを超える廃棄物が新しいフットウェアにリサイクルされた。

とはいえ、全ての目標が順調にクリアされているわけではない。例えば二酸化炭素排出に関してはこの5年間で25%削減を目標にしてきたが、実績は5%の減少にとどまった。

同社のノエル・キンダーCSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)はこう語る。

「この5年間を振り返ると、2020年度の二酸化炭素排出量削減目標を達成することができなかった。素材廃棄量を減らし、再生可能エネルギー活用を拡大したが、より複雑な素材や製品デザインの採用、航空輸送や主要生産地域における電力供給状況の変化などによる問題に直面した」

また1次サプライヤーの廃棄物削減比率は上がったものの、流通センターと本社で製品が埋め立てられることを回避する項目ではこの5年間ほぼ削減できなかった。

「人種間の平等」進める、ナイキのカルチャー

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