日本エシカル推進協議会(JEI、横浜市)は、9月13日まで「エシカル基準」に対するパブリックコメント(https://www.jeijc.org/ethical-lab/publics-comment-jei-ethical-standard/)を募集した。「エシカル」は「倫理的な」という意味。東日本大震災後「エシカル消費」が注目され、商品やサービスに「エシカル」を謳う組織も増えてきた。(井出留美)

JEIは「本当はエシカルでないにもかかわらず、エシカルと詐称することは問題外で、そのような行為がまかり通らないようにしなくてはなりません」としている。
コンビニ業界最大手のセブン-イレブン・ジャパンは2020年5月から「エシカルプロジェクト」を行っている。自社のポイントカード、ナナコカードを持つ客のみの特典として、おにぎりや弁当、サンドウィッチなど、販売期限接近商品を購入したら5%ポイントを付与するというもの(当時、通常購入では1%付与)。
例えば、販売期限が接近した100円のおにぎりを購入したら5円引きということだ。
だが、日常的に食料品の値引き販売を行うスーパーで「5%」という値引率は見たことがない。時間に応じて20%、30%、50%と値引くのが通常のやり方だ。しかも値引き商品の購入機会は、全顧客に均等に与えられる。
■1店舗で年間平均468万円分の食料を廃棄
一方、セブンのやり方では自社カードを持つ顧客にしかメリットが与えられない。ナナコカードの保有率はセブン全顧客の20%台と言われている。
2020年9月、公正取引委員会は、コンビニ一店舗あたり年間で平均468万円分の食料を廃棄しているという調査結果を発表した。この金額は、民間給与所得者の平均年収である436万円(国税庁発表、令和元年度)を上回る。
コロナ禍、解雇で収入が絶たれる人がいる中、雇用労働者の年収を上回る金額の食料を、たった1店舗で捨てているわけだ。
■値引きシステム導入に12年以上
筆者は五輪弁当大量廃棄の取材記事を何度か書いたが、SNSではコンビニオーナーの「五輪はイベントだけどコンビニは日常(的に捨てている)」「五輪は13万食で済んだがコンビニは毎日もっと捨てている」といった書き込みが見られた。
前述の公取委の調査では、コンビニ本部が加盟店の値引きを制限すれば独占禁止法違反にあたる可能性が示された(2021.8.29付、日本経済新聞)。
大手コンビニ3社の中で、ローソンは比較的、値引きに寛容だった。これにファミリーマートが続き、セブンの動向が待たれていたところ、加盟店の判断で「20円引き」などのシールを貼り、レジで値引き操作できるシステムを2021年8月下旬から導入を始めた(2021.8.30付、朝日新聞)。
これまで独自に値引きを続け、食品ロス削減に貢献してきたセブン-イレブンの加盟店も、数少ないが存在する。彼らにとっては今さら感と同時に「ようやくここまできたか」という思いもある。
10年以上前の2009年6月、セブン-イレブン・ジャパンは、弁当などの値引きを加盟店に制限したことで、公取委から排除措置命令を受けていた。以来、今回の値引きシステム導入まで12年以上もかかったわけだ。
エシカル協会は、エシカルのポイントに「他人を思いやる心」を挙げている。値引きは食品ロスを減らす一つの策だ。だが、理想は定価で売り切れること。五輪でJOC関係者は「捨てる前提だった」と語ったが、日常でも捨てないことを前提にしなければならない。