ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、森林管理の認証を行う国際機関FSC(森林管理協議会、本部:ドイツ・ボン)はこのほど、ロシア産木材のFSC認証を一時停止することを決定した。ベラルーシ産木材に関してはFSC認証を取り消す。認証材を取り扱う事業者は4月8日までに、両国で生産された木材の取り引きを停止しなければならない。4月8日以降は、両国産木材および木材製品のFSC認証が認められず、ロゴを表示することができなくなる。(オルタナ副編集長=吉田広子)
FSC認証とは、サステナブル(持続可能)で責任ある森林管理の認証制度だ。審査基準には、環境に関する基準に加え、労働者や先住民の権利といった人権の観点も含まれる。
木材や木材製品でFSC認証を取得するには、適切な森林管理だけではなく、加工・流通に至るまでサプライチェーン全体で適切な管理が求められる。認証を受けた木材や、紙や印刷物、家具といった木材製品にはFSCのロゴを表示することができる。
FSCは、今回のウクライナ侵攻を受けて、ロシアとベラルーシ産の木材を「サステナブルではない」と判断した形だ。
特定非営利活動法人日本森林管理協議会(FSCジャパン、東京・新宿)によると、「流通過程でロシア・ベラルーシを通過する他地域産の木材」も認証材・認証製品として認めないという。
FSCだけではなく、PEFC森林認証プログラムも同様に、ロシアおよびベラルーシ産の木材を「紛争木材」と位置付け、両国産木材の認証を停止した。
ロシア・ベラルーシ産の認証材を取り扱ってきた事業者は、他地域の認証材を調達する必要がある。FSCジャパンにも連日問い合わせが相次いでいるという。FSCは、製品種類別に認証取得者の検索が可能なダッシュボードをオンラインで公開している。
こうしたなか、再び国産材にも注目が集まりそうだ。
一部では盗伐の問題もあり、国産であれば全てサステナブルとは言い切れないものの、地球・人間環境フォーラム(東京・台東)の坂本有希専務理事は、「国産材は相対的にリスクが低く、安定的な供給と安心・安全を考えると、現実的な選択肢」と言う。
同NPOは、国際環境NGO FoE Japan(東京・板橋)らとともに、「フェアウッド・パートナーズ」を立ち上げ、企業や国・自治体などに伐採地の森林環境や地域社会に配慮した木材・木材製品の調達を呼び掛けてきた。
坂本専務理事は「木材は、樹種によって性質が違い、用途によっては簡単に切り替えできないという難しさがある。だからこそ、日ごろからサプライヤーと関係を築き、だれがどこでどういう形で生産しているのか、トレーサビリティー(追跡可能な状態)を確保することが重要だ。伐採地の把握はますます重要性を増してくる」と話した。