【連載】政策起業家とは何者か(7)

政策起業家はロビイストではありません。しかし、日本では政策起業家とロビイストの違いが明確になっておらず、同じように見られている傾向にあります。今回はその違いについて説明します。(三井 俊介・NPO法人SET理事長)

政策起業とロビイングの違いは「公益性」

ハーバード・ビジネス・スクールの人気講師レベッカ・ヘンダーソン氏は著書『資本主義の再構築 公正で持続可能な世界をどう実現するか』(日本経済新聞出版)でこう書きました。

資本主義が行きすぎてしまっているということは至る所で言われているわけですが、では、なぜそうなってしまったのか。経済理論的には経済成長と個人の自由を最大化させていくとされていたのに逆機能してしまっているのはなぜなのか?と。

この本では、市場が本来の機能を果たさなくなった理由は3つあると書きました。

①外部性が適切に価値づけされてない。
②多くの人は、本当の意味で機会の自由を手にするために必要なスキルを持っていない。
③企業は自社に有利な形でゲームのルールを書き換えられるようになっている。

今回フォーカスを置きたいのは、③ですが、①と②についても簡単に触れさせてもらいます。

①については、例えば石油などの価格には、石油自体のコストは含まれているが、環境破壊のコストや再生可能な量を鑑みての値段設定にはなっていないということです。

②については、親の年収で子どもが進学する大学がある程度決まってしまったり、貧困の連鎖が途切れないことを指します。

では、今回は③を掘り下げてみたいと思います。

先ほどの著書に掲載されている事例を紹介しますと、1997年にウォルトディズニー社がロビイングした「著作権延長法」というものがあります。これは企業の著作権を75年からさらに20年伸ばすというものです。

ウォルトディズニー社はこのロビイング活動に200万ドル強、実に2億円近いお金を費やしました。その結果、「ミッキー」の著作権は伸びました。このことでディズニーの収益は16億ドル(1600億円)と試算されました。

本では、以下のように書かれています。

健全なイメージを売りにし、アメリカ中の家庭に必須の娯楽施設とも言えるテーマパークを抱えるディズニーが、当の家庭にコストを押し付け、投資家を10億ドル以上豊かにする一方、それに匹敵する社会的なメリットは何ら生み出すことのない法的基盤を築いたのだ。

他にも化石燃料企業が気候変動に関連する法律に反対をして法律を通さないようなことを行ったりしています。このようなことから市場は機能しなくなっているとされています。

では、本題に入ります。ロビイングと政策起業の違いは何なのでしょうか。

こちらの記事でも紹介しましたが、日本で政策起業家に関する発信などを行っている一般社団法人アジア・パシフィック・イニシアティブは以下のように定義しています。

「社会課題等の解決手段となる特定政策を実現するために、情熱・時間・資金・人脈、そして革新的なアイデアと専門性といった自らの資源をそそぎ込み、多様な利害関心層の議論を主宰し、その力や利害を糾合することで、当該政策の実現に対し影響力を与える意思を持つ個人(または集団)」

つまり、ロビイングとの違いを一言で言うと、「社会課題の解決手段となる特定政策」かどうかというのがポイントです。つまり「公益なのかどうか」が重要なのです。

次回はロビイングの歴史や変遷、そしてパブリックアフェアーズや草の根ロビイングなどとの違いについても整理します。