水道水も汚染 国の規制値は妥当か

水道水の放射能汚染は国民に不安と混乱をもたらした (C)iyoupapa.

ついに水道水から放射性物質検出――。東日本大震災にともなう東京電力福島第一原発事故で、原子炉から漏れて大気中に拡散した放射性ヨウ素や放射性セシウムなどが水道水に混入し、国民を不安に陥れている。ボトルウォーターの買い占め騒動に加え、厚生労働省が3月17日に発表した摂取許容量の暫定基準値をめぐり「危険だ」「いや安全だ」などの言説が飛び交い、混乱に拍車をかける。当面は放射性物質を気にしながら、飲み水と付き合うしかなさそうだ。

■300ベクレルは「10倍厳しい」規制値

食品での放射性物質の許容値について、WHO(世界保健機関)はIAEA(国際原子力機関)の安全基準に従い規制値を設けている。問題の飲み水では、WHOは「飲料水水質ガイドライン」で水1キログラム当たり10ベクレルを許容する。

しかし放射性物質の拡散などの非常時には、一時的に摂取許容量を緩和できる「作業介入レベル(OIL)」という指標を適用することが国際的に合意されているのだ。この場合、放射性ヨウ素131では水1キログラムにつき3000ベクレルまで摂取が認められる。

厚労省は今回、暫定基準値として水1キログラム当たり300ベクレル(乳児は100ベクレル)と設定したので、国際基準に照らせば10倍厳しい規制値を採用したことになる。

もっとも、これはあくまで一時的な摂取許容量の緩和であり、「3000ベクレル以下だから安全性に問題なし。がぶがぶ飲もう」とWHOが推奨するものではない。特に細胞分裂が活発な乳児では内部被ばくのリスクを低く抑えるべきだ。都内では金町浄水場(葛飾区)で22日に水道水を調査した際、1キログラム当たり210ベクレルを検出したが、24日の再検査では基準値を下回った。

■評価が難しい内部被ばくリスク

国民生活の根幹をなす飲み水で、常に放射性物質を気にしなければならないのは明らかに異常事態だ。特に小さい子供を抱える家庭にとって、今回の事故がもたらす不安の影響は計り知れない。

内部被ばくのリスク評価が難しいことも不安を増大させる要因だ。WHOでリサーチャーを務めるグレゴリー・ハートル氏は「WHOの公式見解として、東京の水のヨウ素レベルは非常に低く、飲んでも問題ない」と評価する一方、被ばくは低線量でもリスクがあり、内部被ばくの下限値(しきい値)は設定できないのではという質問に「簡単にコメントは出来ない。しきい値の設定には様々な要素が絡んでおり、決定的な値を出すのは難しいからだ」と答える。

長期化の様相を見せる福島原発事故。環境を汚染し、国民生活をおびやかした東京電力の責任は極めて大きい。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年3月24日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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