鈴木奈々さん「休養経て心の幸せが大事だと実感」

記事のポイント
①「みんなの働き方EXPO2022」がオンラインで開催された
②登壇したタレントの鈴木奈々さんは3カ月の休養を経て復帰、自分のペースで働くことの重要性を訴えた
③「人的資本経営」に関するセッションでは、丸井グループの青井浩社長が経営危機を振り返った

TBSラジオとUPDATER(東京・世田谷)のWell-being tech事業「みんなエアー」は8月30日、「みんなの働き方EXPO2022」をオンライン開催した。幸せな働き方を実践するための企業のあり方を探るのが目的だ。3カ月の休養を経て復帰したタレントの鈴木奈々さんは「同じような悩みを抱えている人はたくさんいる。休むことは勇気がいるが、無理せず自分のペースで働いてほしい」と話した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

■「勇気をもって相談してくれたことが嬉しい」

セッションの一つ「これからのみんなの幸せな働き方」では、タレントの鈴木奈々さんが登壇。鈴木さんは2021年8月から3カ月の休養期間を経て、現在は自分のペースを大切にしながら仕事と向き合っているという。

「芸能界は、競争の世界。休んだら仕事がなくなるかもしれないという不安があった。加藤茶さん、綾菜さん夫妻に『心と体が付いていかない』と相談したところ、『すぐに休みなさい。大丈夫、みんな分かってくれるから』と言ってくれた」(鈴木さん)

その後、所属事務所に伝え、休養に入った。「事務所に話すのは、とても勇気がいったが、すぐに理解してくれた。テレビ局の人も『ゆっくり休んで』と声をかけてくれて、そういう時代なのだと驚いた」(鈴木さん)。

「幸福学」を研究してきた前野隆司教授は、「ストレス状態で働くことを『ワーカホリック』、わくわくしながら働くことを『エンゲージメント』と言う。どちらも一生懸命働いているという点では似ているが、ワーカホリックの場合はリスクになってしまう。いまは日本全体がワーカホリックに陥っている」と話す。

対処法として「わくわくできていないなら、休むのも辞めるのもあり。ただ、収入の不安がある。あくまで理想論だが、得意なところを伸ばすことを楽しめるようになれば、後々自信を持って辞めることができる。『メタ認知』で自分を客観視することも、心を楽にする対策の一つ」と説明する。

前野教授は、幸福度を上げる「幸せの4つの因子」を紹介。「やってみよう」因子、「ありがとう」因子、「なんとかなる」因子、「ありのままに」因子――がそろうと幸せを感じられるという。

鈴木さんは、休養を経て「お金ではない、心の幸せが大事だと実感した」。周りから「実は私も休んでいた」と声をかけられるようにもなった。

「意外にみんな同じような悩みを抱えている。勇気をもって相談してくれたと思うと嬉しい。いまはばんばん仕事をして稼ごうというより、みんなに元気や勇気を与えられるような人材になりたいという気持ちが強い」(鈴木さん)

夫馬賢治・ニューラルCEOは、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から、「職場では弱さを見せにくいことから、意図的に安心感のある開示の場をつくっていくことも重要ではないか。これからは自社だけではなく、取引先の満足度まで確認していくことが求められるようになるだろう」と語った。

「人的資本経営」をどう実現するか

セッション「幸せな働き方の企業に資本が集まる理由」では、「人的資本経営」について議論した。登壇した青井浩・丸井グループ社長は、2007年から7年間ほど続いた経営危機の時期をこう振り返る。

「立て直すには、時代に照らし合わせて、お客様の役に立つような事業に組み替えなければならない。会社は人の集まりなのに、リストラしてしまえば会社がなくなってしまう。利益を上げるためにリストラすることには違和感があった」

「会社を立て直して利益が出てくることと、一人ひとりの仕事が社会の役に立っているということは本来重なっているはず。企業は人が成長するための場だととらえ、『人の成長=企業の成長』を掲げた」(青井社長)

ただし、「結果が出るまで時間がかかる」とし、「人に投資することで事業を立て直す確信があったが、投資家からは否定的な意見もあった」という。

吉高まり・三菱UFJリサーチ&コンサルティングフェロープリンシパル・サステナビリティ・ストラテジストは「日本では、経営者と株主の対話があまり行われてこなかった。2015年ころから非財務領域での情報開示が進んできたが、まだ理解がない時代に『人的資本』の重要性を伝えることに苦労したのではない」と共感した。

青井社長は「好きを仕事にしてもらうことを意識している」と話し、6年前にアニメ事業部を立ち上げた経緯についても語った。部署や専門性が違うアニメ好きの人たちが集まり、事業を立ち上げたところ、100億円の売り上げを上げるようになったという。

吉高さんは「『人的資本』投資とは、人はコストではなく、人の能力に着目して資本として投資をしていくということ。持続可能な成長は、人がいなくては成り立たない。株主だけではなく、従業員を含めたすべてのステークホルダーとの関係を重視した『ステークホルダー資本主義』が重要視されている。丸井グループはそうした人を大切にする経営を体現している」と評価した。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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