マウエンハイム村のチップボイラー設備(撮影 滝川薫)

■灯油、ガスに比べ10%安い

「計画の当初から発電の際に生じる廃熱をどう利用するか、ソーラーコンプレックス社に相談していました。そこからバイオエネルギー村を作ろうというプロジェクトに発展したのです」と、農家のエーリッヒ・ヘンニガーさんは語る。農家とソーラーコンプレックス社が協力して、住民と自治体を説得。エコロジカルなうえに、魅力的な熱料金に住民の心は動いた。バイオエネルギー村では、熱価格が灯油やガスと比べると10%以上安い上、20年間に渡り安定しているのだ。

村の端には、バイオガス・コージェネ(熱電併給設備)と木チップボイラー設備が設置された。家畜の糞尿やエネルギー作物を発酵させて得られるバイオガスを燃やすコージェネが、通年して電気と熱を生産する。熱需要の大きくなる暖房期には、これに加えて、間伐材や端材を燃やすチップボイラーを運転する。作られたお湯は、道路下に埋設された配管網を通じて各建物に供給され、暖房と給湯に用いられる。さらに、出力200kWの太陽光発電も設置された。

こうしてマウエンハイム村は、村の電力需要量の9倍の電気を生産し、固定価格買取制度を利用して売電。熱については自給できるようになった。地域のエネルギー源に切り替えることで、以前村で消費されていた年30万リットルの灯油に支払っていた金が、今では地域の林業や農業を潤している。そして村の世帯の1割が、ソーラーコンプレックス社の株主になった。

地域の自然エネルギー事業に参加すると、住民としても投資者としても得するモデルを提供し、成功するソーラーコンプレックス社。そもそもこういったビジネスが成立する背景には、ドイツの自然電力に対する優れた固定価格買取制度や、銀行による熱設備への低利子融資制度があることも忘れてはならない。(文・写真 滝川薫)

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