
5月25日、都内で「自然エネルギー協議会」の立ち上げを宣言する記者会見が開かれた。大げさに言うと、私は「歴史の転換点」を目撃しているのではないかとさえ思えた。
福島第一原発事故を受けて、エネルギー政策の見直しや自然エネルギー推進を提唱する動きは当然だ。
しかし、その主役たちが19道府県の知事(多数は代理出席)、地方行政のトップたちだったところに、このイベントの最大の意味がある。
記者会見の壇上には、埼玉県の上田清司、神奈川県の黒岩祐治、長野県の阿部守一、静岡県の川勝平太という知事4氏、三重県と秋田県の副知事が並び、そして右端にはソフトバンクの孫正義社長が座った。
そこにエネルギー政策をつかさどる経済産業省・資源エネルギー庁の幹部や、国会議員たちの姿はなかった。
経産省の官僚たちはこの記者会見を見て、何を感じただろうか。
「中央集権的なエネルギー政策がひっくり返される」という恐怖を感じただろうか。あるいは「知事たちがいくら集まっても、電力は俺たちが握っている」と鼻で笑っただろうか。
孫社長はこれに先立つ23日、参議院の行政監視委員会で、耕作放棄地に太陽光発電パネルを仮設して電力不足を補う「電田(でんでん)プロジェクト」の実施を提案した。
孫氏はこの計画について「耕作放棄地の2割の面積に太陽光パネルを設置することで、原子力発電分の電力を賄うことが可能。電力需要ピークへの対策になる」と説明。「使われていない土地を国難の時に使うべき」と訴えた。
また、原子力発電について「10年後には少なくとも電力依存を現在の半分程度に減らさざるを得ない」とした上で「向こう10年間で総発電量に占める自然エネルギーの割合を10%から30%に増やすべき」と語り、「欧州並みに充実した自然エネルギーの固定価格買取制度の法律を今国会で成立してほしい」との考えを示した。